一生懸命頑張る君に 1
Episode.1 Opening part2
琥瑦と武隆は、あの日以来話さなくなった。
周りは不審がったが、彼らのことを深く追求する者は誰もいなかった。
武隆はそんな琥瑦を見ては、後悔した。
あの時、もっと言っていれば、と。
あの時、陸上の良いところでも言ってやれれば、と。
でも武隆は分かっていた。
あの時点で何をしても、琥瑦が陸上をまたやるということはない、ってことくらい。
分かっていた。
分かっていても、諦めきれなかった。
なぜなら、武隆にとっても、琥瑦は陸上のきっかけであったし、好敵手であったからだ。
武隆は、琥瑦にもう一度走って欲しかった。
一緒に、隣のレーンで、競っていたかった。
でも武隆は分かっていた。
分かっていた。
琥瑦はあれから無気力になっていた。
もう陸上をやる気はなかった。
なぜ、頑なに陸上をやらないと決めつけているのか。
自分でも、それは分からないでいた。
それでも、琥瑦は分かっていた。
陸上で今までやってきて、それが自分の中を大きく占めていただなんてことくらい。
分かっていたけれど、どうすることもできなかった。
彼は暇があれば常にそんなことを考えていた。
別のこともしてみた。
でも、陸上と比べてしまう自分がいる。
もう何も考えたくなかった。
親が心配しているのも分かっていた。
もうそんなことは分かっていた。
そして彼らは、中学生となった。
作品名:一生懸命頑張る君に 1 作家名:雛鳥