一生懸命頑張る君に 1
intervalⅠ
―――――――・・・
「―――それが、本当に陸上というものを認識した、最初の時だったと思います」
琥瑦は一つ一つ大切そうに話した。
「やはり、彼は、田中選手にとって大切な人なんでしょうか」
佳奈美はそう質問すると、琥瑦は微笑んで、「そうですね」と短く答えた。
少しの沈黙が流れた。
それは重苦しいものという訳ではなかったが、まるで彼が着々と流れていく時間を捕らえようとしているかのように、過ぎていった。
もう戻らない、昔のことでも思い出しているのだろうか。
佳奈美はそんなことをぼんやりと思っていると、琥瑦はまたぽつりとつぶやくように語りだした。
作品名:一生懸命頑張る君に 1 作家名:雛鳥