夢と現の境にて◆参
―――捌,焦れる夢
公園から帰った俺は、ふらふらとした足取りで台所へと向かいスーパーで買った野菜類を冷蔵庫へとしまい始めた。その間、ずっと俺は先程の出来事がずっと頭から離れないままでいた。
自分は間宮に全て話せるだろうか。あの時は話してみせると思ったが、はっきり言って自分自身曖昧なところが多い。話せるかどうかというのも勿論だが、問題はその話の内容について、だ。自然と手が止まる。冷蔵庫のひんやりとした冷気が俺の身体を冷やしていく。あの時の自分には全てが衝撃的過ぎて、抜け落ちてしまった記憶や、夢と現実で区別がつかないことがあり、覚えているかぎりでもごちゃ混ぜになっている部分が多かった。だから他人に話すのはとても難しいし、怖いことだ。自分が真実かどうかわからないからこそ、嘘偽りを勝手に語ってしまうのではないかと不安になる。
それでも、どうにか俺は間宮に全てを伝えたいと思う。間宮が話してくれたように。
ﾋﾟｰﾋﾟｰ、と長い機械音で俺はハッと現実に戻った。冷蔵庫を開けっ放しにしていたせいで、冷蔵庫が早く閉めろと警告していた。いつの間にかボーっとしていたらしい。買ったものもつめ終わっていたので、冷蔵庫を閉めてやると機械音はそれでいいとでもいうかのように鳴りやんだ。暫くその冷蔵庫を見つめた後、俺はまたふらふらと歩き出し、自分の部屋へと向かった。なぜか夕飯を食べる気になれない。というか眠気が襲ってきていた。そんなにまで疲れることをしただろうかと思ったが、これは久しぶりに何か見るのかもしれないと、無意識にも感じていた。自室へと入るなり俺は畳へと寝っころがり、傍に置いてあった座布団を枕にして目を瞑った。すぐに意識が遠のいていく。そんな中、俺は無駄かもしれないが少しばかりの願望を思い描く。まだ、考えたいことがある、伝えなければならないことがある。だから…。どうか今悪い夢だけは見せないでくれ、と。