Loveself プロローグ~姫編~
もう、何で分からないの!?ヒメは在野先輩のこと大好きだよ!
だって在野先輩は私の王子様だもん、好きに決まってるよ!
……正確に言うなら、王子様候補ナンバー142、だけどね。
だって、ね。
王子様に相応しい人は、この世界にたくさんいるじゃない。
ものすごくかっこよかったり、顔はそれほどでもないけどすごく頭が良かったり、うまく言えない魅力的な人っていっぱいいるんだよ。
でも―――彼らのうち誰が、自分に本当にふさわしい王子様なのかなんて、分からない。
ヒメはね、誰よりも幸せにならなきゃいけないわけだから。
世界で一番のお姫様のヒメは―――その中から世界で一番の王子様を見つけたいの。
二番目や三番目じゃだめ、一番がいいの。
わがままなんて、言ってないよね?
でも、ただ座って待っているだけじゃ、一番の王子様が誰かわからない。そんなに都合いい運命なんてないよね。ヒメはただ待ち続けるだけの何もできないお姫様とは違うんだよ?
だからヒメは、自分で理想の王子様を探すことにしたの。
王子様候補を決めて―――彼らの中で、本当に王子様に相応しい人を選別するの。
スポーツが好きな王子様のために、サッカーと野球とバスケットボールとバレーボールを練習するの。
勉強が得意な王子様が相手の時は、少しは勉強も頑張るんだから。
そして在野先輩なら―――ゲームやアニメの知識を仕入れて、それを楽しくお話しするの。
クールな女の子が好きな王子様には、少し大人にふるまうし、在野先輩みたいに楽しい人にはいっぱいお話を振るよ?
そうやって色んな王子様とお話しして、遊んで、好きって、大好きって言ってもらいたいの。
ううん、違うよ、別に嫌々やっているんじゃないよ?
だって、どんな人が一番の王子様なのか分からないから、誰が本物でもいいようにあらゆる知識を身につけておくのは当たり前だよ?
アニメもゲームもスポーツも勉強も車もギャンブルも釣りも買い物も日曜大工も料理もみんなみんな勉強するよ?王子様のためなら何だって楽しめるもん!嫌々やったって、王子様も嬉しくないよね?
パパがお金持ちだから、王子様が欲しがってるものはヒメが何でも買ってあげられるしね。
在野先輩にはゲームとかフィギュアとか買ってあげちゃうよ。悠一先輩にはサッカー部だからスポーツタオルをあげちゃう。浩輔君には趣味だって言ってたドライブの時車につけるカーラジオをあげちゃう。だって好きだもん!全然
みんなみんな、ヒメの大切な『王子様の一人』なんだよ?
なんで、そこまでするのかって?
だってさあ。私ヒメは世界で一番のお姫様なんだもん。
今でもヒメは世界一可愛いけど―――でも、それでもやっぱり、本当の王子様には、―――自分の好きな人には、今以上に可愛いって思ってもらいたいでしょ?
そのためならヒメ、どんなことだって頑張れるよ?他のことはどーだっていいけど……王子様のためなら!
王子様のためなら、嫌いな人とでも仲良くなれるもん!好きにはならないけどね。
うん、ヒメはヒメのことが大好き。だってヒメはお姫様なんだもん。
お姫様は常に正しいし、常に可愛いし―――そして、王子様を常に大好きな、恋する乙女なんだもん。
だから、そんなヒメでいさせてくれる王子様のことはもちろんヒメも大好きだし、迷惑とかもかけたくないんだよね。
どうでもいいいじわるな女の子はヒメのことをぶりっことか媚を売ってるとか酷いこと言うけど……女の子として『好きな人』のために頑張るのは当たり前だと思うんだけどなあ。それとも、王子様の前で一番可愛いって思ってもらいたいってヒメがおかしいの?そんなのありえないよ。
女の子は誰だって―――自分の王子様に世界一愛される存在でありたいって思うでしょう!?
むしろ、そう思わない女の子なんてありえないよね。
ヒメはそんな、ごくごく普通の、―――あ、間違えちゃった、普通よりずっとずっとずううっと可愛いだけの乙女だよ?
だから、ね。
ヒメも、王子様をたくさん、たくさん愛するから。
ヒメのことをもっともっと愛してね。
ヒメのことを―――もっともっと『お姫様』にしてね、王子様?
在野先輩、今頃留衣さんにいじめられてないけどいいなあ。
少し、そう思った。
作品名:Loveself プロローグ~姫編~ 作家名:ナナカワ