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Loveself プロローグ~姫編~

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女の子は、誰しも白馬の王子様を夢見るものなの。
もちろん、私---遠坂妃芽(とおさかひめ)もそれは同じ。
でも、ヒメは物語の中のお姫様は大嫌い。
だって、自分から幸せをつかもうとせず、悲劇のヒロインぶるんだもん。
だから、ヒメは自分の手で幸せをつかむんだ。
自分にふさわしい王子様を見つけるために―――自分から行動するんだもん。


だってヒメは、
せかいでいちばんのおひめさまなんだから!





朝目が覚めて、真っ先に考えたのは、ヒメの『王子様』のこと。
私の素敵な―――大好きな王子様。
今日は何の予定もないつまらない休日だけど、―――外にでも出てみればヒメの王子様に出会えるんじゃないかなって気がした。女の子の勘って也あつかな?
そう考えると、とってもわくわくしてくる。楽しみだなあ。
それなら、ベッドでごろごろしていても仕方ないよね。
よし、おしゃれをして出かけちゃおう。
ヒメって本当にアクティブ!
ヒメはさっそく、おしゃれをして街に出てみることにした。

今日は、おろしたてのピンクのワンピース。
そして赤いリボン。
鏡の前でくるりと見回し、満足する。
うん―――今日のヒメも、いつもと同じように可愛い!





準備をして、外に出た。
一人、学校に行く時にも通る表通りを歩く。
今日は日曜日なのもあってヒメの知らない人ばかりだけど、すごく気分がいい。
すれ違う男の人がヒメのことをちらちら見て、頬を赤らめてる。
すっごく気分がいい。えへへ、ヒメは可愛いから仕方ないよね!でも、王子様じゃない人にはなびかないけどね!
嬉しくて、思わず鼻歌なんて歌ってしまう。

レンガの可愛い喫茶店の前を通り過ぎる。そこに、ヒメの王子様はいない。がっくり。
でも、絶対どこかで会えると思うんだよなあ。勘だけどね。
ヒメの予感、当たるといいなあ。
楽しみで仕方ないよ。思わずスキップでもしちゃいそう。
あ、スカートだから背後には気をつけないとね。ヒメは下品な女の子じゃないし。

そして、私はお気に入りのブティックや本屋さんの横を通り抜け、恋人たちの待ち合わせのシンボルとなっている時計台の近くまでやってきた。
場所が場所だもん、私も実際に王子様と何回か来たことがあるし、かなり、期待。
まさか、ここにいたりなんか―――

………………え?
あれは――

見覚えのあるシルエット。
さすがに声までは聞こえないけど―――それでも、喋っていることだけはすぐに分かった。先輩はいつもだもんね。
うん、間違いない。さすがヒメ。お姫様だもんね。
ヒメの勘、大当たり。
あれは、私の―――

「……先輩!」
やっぱりだ。
やっぱり、ヒメの予感は正しかったんだ。
やっぱり私って、すっごいお姫様だ!
思わず全力で駈けよってしまった。はしたない、失敗失敗。
まあ、先輩はそんなこと気にしないと思うけど―――

「……ん、妃芽?」
そこにいたのは―――やっぱり。
ヒメの、『王子様』だった。



「―――それでですね、見てくださいこれ!限定生産版華ルカフィギュア!これをぜひ先輩に見てもらいたいと思いまして。偶然持ち歩いていてよかったです。どうですかこれ、素敵じゃないですか?」
「うおおおおおおあああ!?マジで!?本当に買ったのか!?妃芽お前GJ!最高にGJ!ルカ様は俺の嫁!スリットから除くおみ足で踏まれたいハアハア」
「喜んでもらえてよかったです。ヒメ、雪ミクは持っているのでルカさんは先輩にあげちゃいます」
「……えええ!?いや、さすがにもらえないって!だってこれは妃芽が自分の金で買ったものだろ?いくら俺でも後輩からたかるわけにはいかないって」
「たかってないですって、ヒメの意志ですから。先輩にプレゼント、です。いつも先輩にはお世話になってますし、この間ギャルゲー貸していただきましたし。それのお礼ですよ」
「え、いやいや、悪いって。妃芽飾っておけよ」
「いえいえ、むしろもらってください。そうじゃないと持っていた意味がありませんし」
「いや、でもさ……本当に……いいのか?」
「もちろんです。ルカもヒメより先輩に持って置いてもらいたいですよ」
「……よし、分かった、もらおう!ルカ様は俺が引き取ったあ!ありがとう妃芽っ!俺は最高の後輩を持った、幸せだ……!」
「えへへ、そんなに褒められると照れちゃうじゃないですかあー」

えっと、とりあえず今の状況を説明しておくね。
ヒメの『王子様』―――こと、水口在野先輩と運命的に出くわしたヒメは、先輩の『公園か何かで腰でも落ち着けて話そう』という言葉に従って、今市民公園のベンチに座ってたりする。
隣には先輩と、ヒメの学校でも有数の有名人である都山留衣さんがいる。
留衣さんは『何故か』、恋人でもないくせに、いつも先輩と一緒に行動してるんだよねえ。
普段はにこやかで優しいんだけど―――ヒメ、知ってるよ?ヒメが在野先輩と話し始めると、その笑顔がわずかに引きつるってこと。
留衣さん本人は気付いてないかもしれないけど。
まあつまり―――そういうことだよねえ。

「……」
なんだか留衣さんが怖い顔でずっとこっちを睨んでいる気がするけど、気にしないよ?
だって、留衣さんは在野先輩の彼女さんではないって聞いたし、別にヒメが何を先輩と話そうと勝手だよねえ?
それに、実際問題として、留衣さんと話すよりヒメと話す方が楽しそうだしね、在野先輩。
まあ、ヒメが頑張って在野先輩の好きそうなことを調べて話してるからなんだけどさ。

「いや、お前は最高の後輩だ。俺はお前が俺の後輩でいてくれたことをここまで嬉しく思ったことはない……あんたが神か!神なのか!」
ぴく、と留衣さんの眉が少しつりあがるけど、ヒメにはどうでもいいこと。
「いえいえ、先輩。ヒメはヒメですよ?ヒメ以外の何物でもないのです。ジャスタウェイがジャスタウェイ以外の何物でもないように」
「うん、そうだな、妃芽は妃芽だ。お姫様のような存在だな。しかしだ、世間の姫には恋敵の国を滅ぼしちゃうしちゃう齢14の王女様とか酢昆布大好きな将軍様の孫とかいるからな。お前はそんな姫の中でも最上級だ。姫の中の姫に違いない」
「もう先輩、そんなに褒めても何も出ませんよ~?ディープキスくらいならしてあげますけどお~」
「何だって!?よし、じゃあということはあれか、もう少し褒めればベッドインできるレベルまで達するってことだな。よし、褒めてやる、全力でほめちぎってやる」
「先輩、それはセクハラですよー」
「はっ、セクハラされるのが嫌ならそんなミニスカートはいてんじゃねえよ!捲るぞ」
「先輩、会話の内容が酔っ払いの親父と同レベルです」
「あのなあ、これはあれだよ、『えっちなのはいけないと思います!』とか『パンツじゃないから恥ずかしくないもん!』とか言って張り倒されるというお茶目なオチを期待する俺的コミュニケーションなんだよ、下心なんて少しもないんだよ」
「嘘だッ!!!!!!!!……です」
「……ふふ、さすが妃芽だ……俺のネタの応酬に付いてこられるのは後にも先にもお前だけだよ……どこでそんなにネタを仕入れてるんだ?」
「それは禁則事項です☆」
「完璧すぎてもはやぐうの音も出ないな……」