無題Ⅰ~異形と地下遺跡の街~
Episode.12 悪夢、その後
その後、自分の屋敷へ戻ったヴェクサは、落ち着きなくベッドの上で寝返りをうっていた。
鬨の調子が悪いので、また明日、広場の噴水前で落ち合おうということになったのだ。
最初、鬨は滞在期間は3日だと言っていた。
それならまだ時間はあるし、何も急ぐことはないだろう。そもそも、何を急いでいるのか解らない。
この街に居る「あれ」を見られてしまった以上、この街と無関係では居られないかもしれないが、あと2日だ。そのぐらいなら何の問題も無く過ごせるだろう。・・・・・たぶん。
それに、「あれ」と鬨はあまり接触させない方がいい気がする。
今日の研究所の様子と言い、どうも相性が悪いようだった。いや、「あれ」と相性が合うヤツがいるのかどうかは知らないが。(というかいないだろう)
自分も初めは吐き気がしたものだが、流石に鬨ほどの嫌悪感は感じていなかった(・・・と思う)。鬨は元々色が白いのもあるかもしれないが、それは北国生まれだと言っていたからそれのせいだろう。そうではなくて、「あれ」を見た鬨の顔色は、「白い」なんてもんじゃなかった。そう、言ってしまうなら「蒼白」だ。まさにそれがぴったりだろう。
見ているこちらが可哀想になるほど鬨は怯えていた。
そこまで考えて、ヴェクサは自分でもふと考えたことに納得が言った。何か、引っかかっていたものが取れるような感じだ。
「・・・そうか、あれは・・・怯えてたのか・・・」
ゆっくりと降りてくる思い瞼に、抗いもせずにそう呟いたヴェクサは、眠気に襲われるまま目を閉じた。
作品名:無題Ⅰ~異形と地下遺跡の街~ 作家名:渡鳥