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無題Ⅰ~異形と地下遺跡の街~

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Episode.5 遺跡



階段を下りるごとに、鬨は違和感を感じていた。なんというのか・・・・そう、
階段の感じが、変わっていくのだ。
これも変な言い方だが、そうとしか言えない。
最初、この街にあるような石畳みだった階段が、今では「滑らかなもの」になっていた。壁も、床と同じく「滑らか」になっている。・・・暗くてよくわからないが・・・・。

「気がついたか?」

今まで黙っていたヴェクサが、壁と階段を交互に見ていた鬨に立ち止まることなく聞いてくる。「気づいた」というのはたぶんこの壁と階段のことだろう、と考えて、鬨はヴェクサの隣に並んだ。

「・・・なんなんだ、ここは?それと、さっきからずっと階段なんだが」
「まぁ、そう焦ンなよ。別に地下に連れ込んでなンかしようってンじゃ・・・・おい、冗談だって」

一瞬にして距離をとった鬨に、ヴェクサは足を止めて鬨の方へ向くと、呆れたように言う。

「お前なぁ・・・俺が何かしそうな悪いやつに見えるか?」
「見えるから距離とったんだろ」
「・・・なぁ、これ泣いていい?いい加減泣いていい?」
「勝手に泣けよ」

「冷たい!」と言いながら口をとがらせるヴェクサに、「お前はそれでも25か?」と聞いたら、

「何言ってンだ、男はな、おっさんに近づくほど寂しがり屋になるンだ!」

そんな道、歩みたくない。
というか勝手に決めつけるな。

「俺の知り合いはそんなんじゃなかったぞ」
「じゃあ、実は寂しがり屋なンだ」
「・・・・・・・・・・」

微塵もそんな奴には思えないんだけどな・・・・・まぁ、そんなことはどうでもいい。

「それよりも、この壁と階段だ。なんなんだ?これは」
「わからン」
「・・・・・・・・・・・はぁ?」
「俺にもさっぱりなンだよ。この街の知識人に見せてもさっぱりだった。ただ・・・・・」

「これは滅びた「技術」で作られたものらしい」

それを聞いて、鬨は目を見開いた。
確かに、滅びた「技術」がこうして街に地下に眠っていたり、何かの拍子に発掘されたりとすることはあるが、それは本当にごく稀なことだった。しかもそれがこうして「綺麗な」形で見つかることはほとんどありえないことだ。なぜなら、そのほとんどが「何者か」によって限りなく破壊されていたからだ。限りなく、復元が不可なほど、破壊しつくされ、壊されまくっていたからだ。と言ってもその「何者か」が今はもういない、はるか昔の「技術」を持っていた時代の者らしいので、文句のつけようもないのだが・・・・。

「信じられないって感じだな?」
「いや、信じられないんじゃない。・・ただ、此処まできれいに残っているのは・・・」
「ありえないってか?」
「・・・・あぁ」
「だが、実際にここは存在する」
「それは、わかってる」

さすがに、これが夢幻だとは思えない。かといって、すぐに信じられるようなことではなかった。

「俺はさ、もともとは科学者なンだ」

なんの脈略もなくヴェクサが口を開いた。

「そうなのか?銃の扱いに慣れていたから、そっちかと思ってたんだけど」
「いや、あれは護身用に身につけただけのもンでね。まぁ、それなりに役にたってはいるな。・・・というか、お前もかなり慣れている感じがしたぞ?「扱う方」もだが、主に「避ける」方に」
「あぁ・・・まぁ、ちょっとな。「避ける」のには慣れたというか、慣れざるおえなかったというか・・・」
「?」
「いや、気にしないでくれ。で、なんでそんなことをいきなり言いだしたんだ?」

珍しく歯切れの悪い鬨の返答を疑問に思うも、ヴェクサは本来の話を思い出し、話を元に戻した。

「ンまぁ、科学者っつっても、「技術」が滅びた今じゃあ、ろくな研究なんて出来やしないが・・・まぁそれでも俺は科学者なンだ。ここはその研究施設として使ってる。というより研究に必要な資料や、材料が此処にしかない」
「?どういうことだ」
「ついてくりゃわかる。だからとりあえず進もうぜ」

そこで、鬨は自分の足が止まったままでいたことに気がついた。

「あぁ、わるい。でもな、さっきからずっと歩いてるんだぞ?どこまで続いてるんだこの廊下。先が暗くて見えねぇぞ」
「あー・・この地下遺跡はな、この街全体に張り巡らされてるんだ。それどころか次の街まで行ける道もある。道がありすぎて俺しかわかるやつがいねぇってのが、難点だけどな」
「絶対に俺から離れないでくれ」
「いや、反対だろ。というか誤解されそうな言い回しはやめろ」

そう言いながら、がっ、とすごい速さで鬨に腕を掴まれたヴェクサは、その手を嫌そうにはたき落とし、さらに奥へと足を進めていく。

「あ、そうだ。此処にはまだ俺も知らない罠とか結構あるから気をつけ・・・」
「え、」

ヴェクサが思い出したように言いだしたときだった。
がちっ! というスイッチが押されたような音がした瞬間、後ろの方でゴゥン、という音が響いてきた。さらにその音はこちらに近づいてくる。

「なぁ、俺の予想だとこのままここにいると二人であの世逝きなんだが」
「あぁ、俺もそう思うな。心中でもするか?」
「冗談だろ」
「冗談だ」

その瞬間、後ろも振り向かず二人同時に走りだした。

「ばっか、お前、なンで人が注意した途端に罠に引っ掛かってンだよ!」
「知るか!というかあんただって言う途中だったろ!というか最初にそういうことは言っておいてくれ!」
「忘れてたンだよ!しかもお前あんな単純な罠に引っ掛かるなンざ誰が想像するよ!空気嫁!」
「俺は王道に従ったまでだ!だから俺は空気読めてないんじゃなくてあえて空気を読まないことで空気を読んだんだ!」
「嘘つけお前!さっき「知るか!」って言ってたじゃねぇか!というか意味わかンねぇよ!」
「俺だってわかってねぇ、よっ!!??」

息切れもさせずそんなことを喋りながら――いや、叫びながら全速力で走っていた二人の目の前には曲がり角が迫っていた。

「どっちだ!?」
「あーくそっ!右だっ!」

素晴らしいコンビネーションで壁にぶつかることなく右に飛び込むようにして曲がった二人は――というか実際飛び込んだ二人は、床に伏せる形でそこにいたのだが、それが仇になった。追ってきていたものは言わずともがな巨大な丸い岩。それが岩よりも固い物質で出来た壁にすごい勢いで衝突したらどうなるか。答えは、粉砕だ。勢いのある岩は、そこで砕け散る。そしてそれは今回も例外ではない。

ドォォォォン! というすさまじい音を立てて砕け散った岩の破片が、逃げそびれた2人に降りかかる。岩の破片と言ってもなめてはいけない。縦横同様に4、5m、あろうかという廊下にいっぱいの大きさで転がってきた岩である。破片は小石ではなく、言うならば鈍器だ。当たれば致命傷は避けられないというような破片が次々と降ってくれば、いくら鬨であろうとも敵わない。
しかし、「ちっ・・・、仕方ねぇか」という独り言を言ったかと思うと、鬨は自分の腰にあるポーチから翡翠色に輝いている石を取り出し、前へ投げた。