看護師の不思議な体験談 其の九
霊媒士と懸命に話をした後、電話を切り、
「今から念を送っていただきますので、しばらくの間話しかけないで下さい!」
と言われ、あっという間に部屋を追い出されてしまった。
初めての出来事に、しばしポカーンとなった。ジワジワと、なんともいえない怒りが沸き上がってきたのだが、ぶつける場がないというか。
結局、主治医と相談し一旦退院してもらい、治療のほうは通院していただくことになった。医師記録を見ると、『本人の強い希望にて本日退院許可』とあっさりした記録がなされていた。その一言の裏にはこんなにも大変な患者様とのやり取りがあるのに。
そんな出来事があり、いつの間にやら夜勤スタッフが来る時間。
東京へ旅行に行ってたMさんが、お土産の紙袋を抱えて入ってきた。
「お疲れさま~」
「あ、もう夜勤が来る時間なの?どうだった、占いは?」
「それがすごいんだって!」
Mさんは鼻息を荒くして話し始めた。
「私が病院で働いてるのも当てたの。それから、私が旅行している間、入院患者さんは増えないわよって。どう?」
確かに、ここ最近緊急入院もなかったし、退院もスムーズ、患者数は減ってるかな…。
「わあ、結構本物っぽいですね」
「そうでしょ!」
続けて話す内容に私はちょっと、いや、かなりびっくりする事になる。
「その、患者数が増えない理由がすごくって。」
「ふんふん」
「今お盆でしょ。だから、うちの病院と関係してる霊たちが病室に来てるんだって。」
「…え、それって…」
あの患者様が言ってた事は本当なんじゃ…。
「怖いよね。新しい入院患者が増えないように、霊たちが、ベッドをそれぞれ使ってるんだって!」
「……。」
泣きながら退院していった患者様のことを、ふと思い出した。
霊が見えるっていうのも、大変だなぁ。
霊感が全く無い自分にほっとした。
占いのお店とか、ちょっと行ってみようかな、なんて思った夏の出来事。
作品名:看護師の不思議な体験談 其の九 作家名:柊 恵二