ココロノオト
少年は空を見上げた
少年は空を見上げた。
真っ青に、どこまでも広がる空を。
自然の作り出す、美しい青の空を。
空はなぜ青いのだろう?
少年は見上げながら問うてみる。
物言わぬ青空に問うてみる。
問うてみても答えは出ない。
けれど、人はそれを知ろうと躍起になる。
自然の作り出す神秘に、人は心を奪われてしまうから。
あまりにも美しい、自然のままの尊さに。
少年は空を見上げる。
騒がしい雑踏の中でも、空は沈黙を守ったまま。
それでも青い空はいつでも見下ろしている。
だから少年は空を見上げた。
不意に涙が溢れそうになる。
それはあまりにも美しいからだろうか。
それとも手を伸ばしても届かないからだろうか。
理由はきっとごちゃ混ぜだけれど、見上げた瞳に空が映る。
滲んだ涙に、世界は歪む。
けれど、空は変わらず青いまま。
それが無性に哀しくて、嬉しくて、ふっと俯いた。
ぽたり。
透明な雫が地面に落ちてじわりと染み込む。
少年は空を見上げた。
そう、もう一度。
その果てしなく続く、青い空をその瞳に焼き付けたくて。