Juno は きっと微笑んだ
お昼になって
日曜ミサの帰りに信者さんが何人も見学にやってきて恥ずかしい時間が終わって、もうすぐ12時になろうとしていた。
「劉たちは弁当持ってきたのか・・」
隼人さんが手を休めて近付いて声をかけてくれた。
「直美が作ってくれましたから、もって来ました」
「そうか、用意いいな・・」
「叔母さんが、お昼は家にみんなで一緒に来なさいって、言ってたらしんですけど・・」
直美が、さっきミサ帰りの叔母に言われたらしかった。
「そうか、いいのか、おじゃましても・・」
「いいんですよ、叔父さんは出かけちゃってるらしいから暇なんでしょ」
相変わらず、今日も叔父はゴルフに出かけたらしかった。
「じゃぁ、お昼にでもするか・・」
「そうしますか・・」
ペンキ塗りをずーっとだったから、たいした肉体労働ではなかったけど、お腹はもうぺこぺこだった。
「直美、ご飯にしようって・・」
「うん、おなかすいちゃったね、叔母さんちで食べるんでしょ」
「そう、お弁当もってね」
「うん」
直美は返事をすると、手をとめてお弁当が入ったバッグを取りにだった。
「叔母さん、あがっちゃいますよー」
勝手に庭にまわって、日当たりのいい南側の部屋の引き戸を開けていた。
「あら、そんなとこから・・」
「なんか、汚れてるから、ここの廊下でいいです」
「いいわよ、部屋の中にあがりなさいよ」
言われても、土だらけで、とってもあがれそうも無かった。
「叔母さん、暖かいからここで大丈夫ですから・・」
直美はもう、廊下に座りながらだった。
「そう、遠慮しなくていいのに・・」
「平気ですよ、今日は暖かいですから、ここ気持ちいいし・・」
「じゃぁ、今、お味噌汁もってくるからね・・みなさん、座ってくださいな」
叔母は言い終わると、台所に向かっていた。
「じゃぁ、俺たちも座らせてもらおうか、麗華」
「はぃ、お弁当・・」
麗華さんが腰をおろしながら隼人さんにお弁当を手渡していた。
4人で外を向いて、それぞれのお弁当を広げだしていた。
「はぃ、どうぞ、食べてくださいね・・」
叔母がお盆にお味噌汁と、お新香を持ってきてくれていた。
「すいません」
みんなで頭を下げて声を出していた。おいしそうなお豆腐の味噌汁だった。
4人で外を眺めながら、食事を始めていた。
直美のお弁当もおいしかったし、麗華さんが作ってきたお弁当も盛りだくさんで、おいしそうだった。
「隼人さん、ペンキ塗るの終わったら、今日はお終いですか・・」
「そうだな、俺のほうも終わりだから、今日はそれで終わりだな、あとは来週に仕上げの色を塗ったら終わりだな・・今日は3時ごろ終わっちゃうだろ」
「あと、1時間ぐらいで終わりそうですよ」
「そうか、劉も直美ちゃんも、麗華もけっこう、器用で助かるわ」
お弁当を口にして聞いていた直美も麗華さんも、うれしそうな顔だった。
「おいしいねー 楽しくっていいやー」
麗華さんが直美にだった。
「はぃ、なんか、遠足に来たみたいで楽しいです」
「そうだねー」
「はぃ」
直美も麗華さんもにこにこ顔で、お弁当をほおばっていた。
気持ちのいいお昼の時間が過ぎていた。
「うーん お腹いっぱいだわ」
隼人さんが叔母の出してくれた日本茶を飲みながら満足そうな声を出していた。
お弁当を食べ終わって、お日様うけて、外を眺めながら4人並んでで日本茶を飲んでいた。
「なんだか、すごい量たべるのよね、隼人って・・」
麗華さんが笑いながらだった。
「そうですかー でも、体大きいから、隼人さんは・・」
直美がこたえていた。
「直美ちゃん、簡単だなぁー」
「だって、大きければ食べるでしょ、やっぱり・・」
「それにしたってって量なんだから・・あきれるわよ」
麗華さんはあきれてたけど、隼人さんは身長が180cm以上だったから、俺も、直美の考えに賛成だった。
「わたし、教会のお庭散歩してこようかな・・」
立ち上がって麗華さんが隼人さんにだった。
「うん、いいぞ、もうちょっと休んでからしようや、順調だから・・俺は、ここで、横にならせてもらうから」
言いながら隼人さんは廊下に横になっていた。
「じゃぁ、わたしも、麗華さんと一緒に行って来るね・・桜が少し咲いてたし・・」
「うん、のんびりしてきていいよー 俺もここで 横になってるわ」
「寝ちゃったりしないでよ、風邪引いちゃうからね」
「お昼ねですから、少しは寝ちゃうよ」
「ちょっとにしなさいよー、行って来るね」
言い終えて、直美と麗華さんは教会に向かって歩き出していた。たしかに向かった教会の桜の花は、ほんの少し咲きだしてきれいだった。
「来週完成ですか・・隼人さん・・」
「うん、そうだね」
「きれいにできそうですね、さすがですね」
「手伝いは小さい時からしてたからな・・まっ、あんなもんだなぁ」
「プロがやったって感じですよ」
「そんな風に見えるか・・」
「ええ・・」
2人で廊下に寝転んで話をしていた。
「ここでしたかぁー 気持ちよろしいかぁ・・」
でかい声が隣の教会の庭からだった。あわてて隼人さんと体を起こすと間違えようもなかったけどステファンさんだった。
「こんにちわ」
「今、そっち行くよって・・・」
「はぃ」
2人であわてて返事をしていた。
ステファンさんは庭続きの扉を開けてこっちにだった。
「よっこらしょっと・・聖子さんお茶もらへんやろかー」
「はぃ、どうぞ」
「おっ 早いでんなぁー」
「声聞こえましたからね」
「ごちそうになりますわ・・」
うれしそうに聖子叔母さんに頭を下げて日本茶を口にだった。
「隼人はん、出来上がり、来週あたりやろか・・」
「はい、後は色をもう1回塗るだけですから、来週で終わりです」
「そうかぁー 夕方までかかるやろか・・」
「どうかなぁ・・かかるでしょうね」
「あんさん、来週も来ますの・・」
俺のことだった。
「来ようかなぁーって思ってますけど・・学校始まるから、まだ、はっきりと予定きまってないんですよ、バイトのほうが」
「そうかぁ・・来週、はよ完成させて、花見でもどうでっしゃろ・・どないだ、聖子さん」
「いいですねー ちょうど満開かもしれませんねー」
「そやろ、みんなで午後からでも手伝えば3時ごろからできしまへんやろか・・どないだ、隼人はん・・うちの若いもんにも午後から手伝わせますよって」
「いいですねー 手伝ってくれるならその時間までに仕上げてお花見しましょう」
隼人さんがうれしそうにステファンさんにだった。
「ほな、雨降らなかったら、そういうことで、ええですか・・」
「はぃ」
「あんさんも、バイトなんか休んでよろしいから、手伝いしに来なはれ」
「はぃ、じゃぁ そうします」
勝手だなーって思ったけど、楽しそうだったから、願ったりだった。
「じゃあ、お料理は、女の子達と作っておきますね、3時でいいんですね」
「そやなぁー すんまへんなぁー お昼がいいんでしゃろけど、ミサ終わってすぐでは、他の信者さんもいれてたくさんでやらんといかんしなぁー それやと、わて、おいしい酒を遠慮せんといかんから、こじんまりがええんですわ・・」
うれしそうに、大きな声で笑いながらだった。
作品名:Juno は きっと微笑んだ 作家名:森脇劉生