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コックピットへようこそ

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いよいよ明日はジャンボ飛行機に乗る日です。ひろき君は、うれしくてたまりません。胸がわくわくしてじっとしていられないほどです。今まで何度も見てきた飛行機の絵本を今も広げています。   ジャンボ機が大空を飛んでいるシーンとか座席がたくさんならんでいる機内やコックピットと呼ばれる操縦室の様子そして操縦するかっこいい制服のパイロットさんと美しいスタイルのスチュワーデスさんの姿などをにこにこしながら飽きもせず繰りかえし見ていました。
お母さんは明日の準備のため大忙しです。
夕ご飯の時「ぼくは大きくなったらパイロットになるんだ」とひろき君は、ずっと前から考えていたことを思いきって大きな声でいいました。
お父さんは「そりゃすごいな。でも たくさん勉強をしなければならないし大変だぞ」といいました。
「ぼく、がんばるもん」と答えると
お母さんは「そうね、一生懸命がんばって立派なパイロットさんになってね」と励ましてくれました。
その日の夜はなかなか眠れませんでした。
いろんな楽しい思いが次から次へと出てきて頭の中がいっぱいだったからです。
朝、目がさめると窓の外には青空がいっぱい広がっていました。
元気にとびおきて食堂にいくと、もう食事の用意はできていました。
お父さんが出てきて皆が揃ったので朝食の時間になりましたが うれしくて食べたものがなかなかのどをとおっていかないような気がしました。
さあ、身支度をととのえて羽田にむかって出発です。
タクシーで日野の駅に行きオレンジ色の電車に乗りました。   大勢の人でこみあう東京駅でうぐいす色の電車に乗り換え浜松町という駅に着くと今度はモノレールに乗りました。  
しばらく続いた明るい海のけしきから暗いトンネルに入って間もなくすると羽田空港に着きました。
広い空港は人、人、人でいっぱいでした。
お父さんが搭乗手続と荷物の預けを済ませてから搭乗口ゲートで検査を受け搭乗口に向かいました。 途中、絵本で見たと同じ制服のパイロットさんとスチュワーデスさんたちに行き会いました。
ひろき君は本物を見たのが初めてだったのでドキドキしました。  
「やっぱり、カッコいいな」とつぶやきながら憧れの目でじっとその姿に見入ってしまいました。
搭乗口の待合室はもう大勢の人でいっぱいでした。
大きなガラスごしに飛行機が何機も見えます。いちばん近くに横づけされている飛行機こそ実物のジャンボ機です。
「でかいなあ」隣の飛行機と比べるとダントツです。
「この飛行機に乗るんだよ」お父さんはジャンボ機を指さしながら教えてくれました。
あちこち見ながら待っていると搭乗の時間になりました。長い行列ができて順番に飛行機につながるブリッジの方にみんな入っていきます。ブリッジを少し歩くと飛行機の入り口でスチュワーデスさんがにこやかに迎え入れてくれました。
ひろき君たちの座席は中ほど、右側の窓につながる三つの席でした。
ひろき君が窓のそばの席に座るとお父さんがシートベルトをしめてくれました。
スチュワーデスさんの放送が入ると機体はゆっくりと動きはじめ、すこし走ってから止まりました。
「まもなく離陸いたします」という放送が聞こえると「ゴゥオー」というものすごいジェットのエンジン音がして飛び出すように猛スピードで走りだしました。
「ゴツゴツゴツ」という強い振動が身体に伝わってきます。ちょっと苦しい感じがします。
突然スーと振動が消えると今度は、からだが浮くような感じになりました。
お父さんが「離陸したよ」と教えてくれました。  
「やったー」とひろき君は心の中でさけびました。
ぐんぐん飛行機は上昇していき、やがて水平飛行に移りました。
エンジンの音も静かになつたようです。
窓から見えるのは青い空ばかりです。
ひろき君はこれから会いに行く札幌のおじいちゃん、おばあちゃんの優しい笑顔を思い浮かべていました。
「むこうに着いたら、いろんなことを話すんだ」
お友達のこと、幼稚園の先生のこと、昨日初めて咲いたチューリップの花のこと、高尾山に登山した時のこと、自転車に乗れるようになったこと、多摩動物公園に行ったこと・・ 次から次へと話したいことが思いうかんできます。
そのうち、しだいしだいに何だか気持ち良くなってきて だんだん瞼が重くなってきました。  
きっと昨日の夜よくねむれなかったせいです。  そして、いつしか眠りの世界に入っていきました。
急にトントンと肩を軽くたたかれたのでびっくりして目をさますとお父さんとお母さんがニコニコしながらこちらを見ています。
お母さんが「スチュワーデスさんが ひろきに ご用があるそうよ」といって通路のほうに目をやりました。  
きれいなスチュワーデスのお姉さんが前かがみになって笑顔でひろき君の顔を見ながら話しかけてきました。
「ひろき君はパイロットになりたいんですってね」といわれたので大きくうなずくと「機長からの特別招待です」といって手招きしています。
お父さんがシートベルトをはずしてくれたので急いでスチュワーデスさんのほうにかけよりました。
スチュワーデスさんはひろき君の手をとると「これからコックピットのほうにご案内します」といいました。
ひろき君がビックリしてお父さんとお母さんの顔を見ると「よかったわねー」「ゆっくり楽しんでおいで」「行ってらっしゃい」といってから二人は小さく手をふって見送ってくれました。
ゴーという低いエンジン音を聞きながらスチュワーデスさんに手をつないでもらって、どんどん前へ進んでいきました。揺れは、ほとんどなく安定しているので歩きにくいことはありません。階段を上って二階に着くとすぐコックピットのドアが見えました。
スチュワーデスさんが合図をしてドアをひらきました。 
「スゴーイ」ひろき君は思わず声を出してしまいました。 
目の前には二つの操縦席があり、そのまわりには、たくさんのスイッチやレバー、メーター、ゲーム機の画面のようなものなどが所狭しとならんでいます。
絵本で見たことはありますが本物は、すごい迫力です。
「ようこそ、コックピットへ」機長さんが操縦席からふり向くとにっこりしていいました。
「あっ、おじいちゃん」ひろき君は、びっくりして叫びそうになりました。
そうです。機長さんの顔がおじいちゃんにそっくりだったのです。
「そんなはずは、ないよな」そう思いながら
ひろき君はピョコンとおじぎをしました。
「こちらへどうぞ」副操縦士さんが席を立ってくるとひろき君をだきかかえて副操縦席に座らせてくれました。本当にビックリの連続です。
席の正面には細長い窓があり手前にはハンドルのような操縦桿があります。
胸がドッキン、ドッキンして自分でも少し興奮しているのがわかりました。
「ひろき君はどうしてパイロットになりたいの」と機長さんがたずねてきました。
「ぼくは空を飛ぶ飛行機が大好きで大好きで・・・・・」「その飛行機を自分で操縦できたらすごいなあーと思って」と機長さんによく聞こえるようにひろき君は大きな声でがんばって答えました。
作品名:コックピットへようこそ 作家名:kankan