手鏡
「何が悪かったんだろう・・・」
私は落胆してその場にヘタリこんだ。
と、その時、居間から亭主の叫び声がした。
「おい、テレビを見てみろ!」
そこに写っていたのは、信じられない映像。
おそらく日本のどこかで大災害があったのだろう。
ガレキの山と化した建物から、必死で家族を救い出そうとする者、避難所とおぼしき場所で両親の行方を必死で探す子供。炎の海と化した町を茫然と眺める人・・・。
それは、この世のものとは思えぬ惨状だった。
ああ、そうか・・・・と、私は悟った。
要するに、私達の願いの優先順位が大幅に下がったのだ。
私は鏡に向かって、「神様どうか一刻も早く、あの方達の願いを叶えてあげて下さい」と祈った後、「でもいつの日か、手が空いたら、私達の願いも叶えて下さいね」と、しっかり付け加えた。
(おしまい)
作品名:手鏡 作家名:おやまのポンポコリン