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氷解き

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 あれはいつもよりも雪の多い年だったね。氷もつららもよく張った。今年の氷は良いものばかりだと、盛んに氷解きが行われた。
 その年の正月近くのことだった。
山向こうの港町へ出稼ぎに出ている斜向かいの若い息子が帰って来た。新年を迎える前に、両親の顔を拝みに帰って来たんだろうね。
小さい頃から負けん気の強い子で、大きくなるとすぐに仕事を求めて出て行った。こちらへ帰って来る事と言えば、盆と正月、それくらいのものだったが、それも数年の内に少なくなっていた。
息子は絹がうちへ嫁いで来たことを知らなかったみたいでね。氷解きの教室を開いて、家に人だかりができていると、急病人でも出たのかと思ったそうだ。
作品名:氷解き 作家名:にょす