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精霊の声が聞こえるか 3

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 シルクを見てときめかない男子高校生はいないだろう。俺だって、シルクの正体が“チェロの弓に宿る精霊”なんていうわけのわからないものだと知らなければ、他の生徒たちと同じ反応をしたに違いない。
「でも絹高で唯一、シルクちゃんを見て一瞬明らかに動揺した人がいたんだよね。まぁ隣にいたその子の友達が『あの子やばっ!』って話しかけたせいで、すぐに普通の反応を装えたみたいだけど。私はちゃんと見てました♪」
 美桜はにこにこしながら話をしている。こういう話を聞いていると、つくづく美桜の前では悪さができないと思う。いや、美桜の場合、美桜と知り合いだというだけで悪だくみはできないかもしれない。
「ルーフって髪の色が銀とかピンクとか特徴的だから、ルーフを知ってる人にはすぐ見分けがつくらしいんだよね。で、さっくん? その犯人候補、誰だと思う?」
「だからな、俺は頭の回転がお前みたいにナチュラルにいかねぇの。がたがたなんだよ。名探偵は他を当たれ」
 テンションの高い時の美桜は、会話がクイズ形式になって面倒くさい。
「さっくんもたぶん聞いたことくらいはある人だよ?」
 そう言いながら美桜は、今日のコンサートのパンフレットを俺によこした。そのパンフレットを開いて、やっと美桜の意図がわかった。パンフレットの最後、コンサートのトリを務める高校生。
「平山響夜。こいつ絹高の2年だよな、たしか。音楽一家に生まれてバイオリンの腕は相当評判がいい」
「ご名答☆」
 やっとクイズに正解できた探偵(笑)に、相棒はご満悦だ。俺からしてみれば、ほとんど美桜が正解を教えられていたようなもので、むしろ虚しいのだが。
「まだ確定させるわけにはいかないけどね、冤罪は避けたいし。でもこのコンサートに来る価値はかなり高くなったと思ってる」
「で、で? どうするんだ!」
 てっきり話を聞いていないと思っていたシルクが、突然会話に割り込んできた。犯人候補が浮かび上がっただけでも、その進展が当事者であるシルクにはうれしかったのだろう。
「うーん……ここからはあまり気が進む方法じゃないんだけどね」
「どうするんだ?」
 わくわくしながら尋ねるシルクだったが、さすがの俺もこのクイズの答えはわかった。そもそも犯人が超常現象を扱っているのだ。目には目を、歯には歯をとなってしまうだろう。
「さっくんの能力を使って音から心を読んでもらうしかないね」
「そうだろうな。表向き『音楽大好きです!』って笑顔で語ってるようなやつらしいし、そうでもしなきゃ本当は音楽をどう捉えているかなんてわからないだろ」
 美桜の言うように、人の心を覗く能力を使うのはどうかとも思う。ただ、平和な音楽の世界を望む俺としては、ルーフの非常事態をどうしても解決したい。シルクの言っていたように「音楽の秩序」なしでは、今のように純粋に音楽を楽しむことは出来なくなるだろう。
 そうこうしているうちに客席は暗転し、コンサートが始まった。途中、休憩はあるものの、トリの平山響夜の演奏まで気が抜けないコンサートの幕が上がった