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水底

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 昼寝から目が覚めると部屋の隅におおきな魚が浮かんでいた。
鱗が青緑色で、ところどころ苔むしている。
長いひげをゆらゆらと揺らし、右を向いたり左を向いたりしている。
口をぱくぱくさせては小さな気泡を吐き出している。
どうやら生きているようだ。
 魚は部屋の隅に留まっている。
右の角に頭がぶつかれば、左に向き直る。
左の角に頭がぶつかれば、また右に向き直る。
ちいさな気泡を吐き出しながら、なんども繰り返し頭をぶつけていた。
ぶつけるたびに、ぱら、ぱら、と、青緑色の鱗が床に落ちた。
ぼんやりとした頭でしばらくそれを眺めてから、また眠りに落ちた。

 夜になってもまだ魚は部屋の隅に浮かんでいた。
気味が悪いとも思ったが、隅から動くことはなかったので、魚を避けてキッチンへと向かった。
 一人暮らしの私にとって、この部屋は少々広すぎる。
コンロが2つ備え付けられていることと、浴室とトイレが別々であることには満足していたが、家具を置いてもなお余る空間と、目を刺すような白い壁紙には、いつまで経っても慣れなかった。

作品名:水底 作家名:にょす