春のお通り
目を開けるとユキオが居た。先ほどよりもすこし晴れ間が広がったようだ。
ユキオは小さい。私の腰ほどの背丈をしている。毎朝ランドセルを背負って学校へ行く。小学生なのだ。
ユキオの髪の毛は栗色をしている。いつもつまらなさそうに河原で算数の宿題をしている。今日はというと、紺色のランドセルを机代わりに分数の引き算をしていた。
犬がユキオの側に寄る。ユキオのことを好む犬なのである。ユキオも犬のことを好むと見えて、首や背中をさすってやる。心地よさそうな顔をしている。
「僕、今日はもう宿題いいんだ。」
ユキオは突然話し出す。突然話し出して、突然黙るのがいつものユキオだった。
「僕、今日はもう宿題いいから、ずっと歩いて行こうと思うんだよね。」
ずっと、と言い、河の流れ行く先を指差した。おもちゃのように小さな指先にはさくらの花弁のような爪がついている。
「来る?」
ランドセルから白いリコーダーを取り出して、ぴゅうと一音奏でてみせた。
行きましょう、と頷いた。左隣で犬もこくりと頷いた。
「行こう。」
ユキオは真剣な顔をして歩き始めた。
ユキオは小さい。私の腰ほどの背丈をしている。毎朝ランドセルを背負って学校へ行く。小学生なのだ。
ユキオの髪の毛は栗色をしている。いつもつまらなさそうに河原で算数の宿題をしている。今日はというと、紺色のランドセルを机代わりに分数の引き算をしていた。
犬がユキオの側に寄る。ユキオのことを好む犬なのである。ユキオも犬のことを好むと見えて、首や背中をさすってやる。心地よさそうな顔をしている。
「僕、今日はもう宿題いいんだ。」
ユキオは突然話し出す。突然話し出して、突然黙るのがいつものユキオだった。
「僕、今日はもう宿題いいから、ずっと歩いて行こうと思うんだよね。」
ずっと、と言い、河の流れ行く先を指差した。おもちゃのように小さな指先にはさくらの花弁のような爪がついている。
「来る?」
ランドセルから白いリコーダーを取り出して、ぴゅうと一音奏でてみせた。
行きましょう、と頷いた。左隣で犬もこくりと頷いた。
「行こう。」
ユキオは真剣な顔をして歩き始めた。