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水晶の部屋

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 紫色の薄いカーテンの向こう側には、光り輝く洞窟が広がっていた。
洞窟の壁面からはごつごつとした水晶がいくつも頭をのぞかせ、中心に置かれた丸机の上には、おおきな球体が台座の上に鎮座している。
その透明な球体の中心から発せられた七色の光が、壁面を覆う水晶に反射し、まるでこの洞窟全体が自ら発光し、光り輝いているかのように見えた。
「土足で大丈夫よ。空いてるところに置いてちょうだい。」
少女はきらきらと輝く七色の光の中で言った。
中に入ることが少しためらわれたが、本を抱えていても仕方がないので、少女の言う通りに、机の端に本を置いた。
中心ではおおきな球体が依然光を放ち続けている。電気コードを目で捜したが、そのようなものはどこにもありそうになかった。
「これ、水晶なのよ。おおきいでしょ。
これくらいのおおきさだと陣と組み合わせるだけで自然と発光してくれるの。
この七色の光は部屋に星を閉じ込めておくための結界なのよ。星が瞬いていると、占いの精度がぐんとよくなるからね。」
そう言って洞窟の天上を見上げた。
つきぬけるほど暗い闇の中に、きらりと輝くちいさな光が見て取れた。あれが少女の言う星、なのだろうか。

少女が球体にそっと手をかざすと、強い光が閃光となってあたりに飛び散った。
閃光は壁に埋もれる水晶に反射し、洞窟の中をものすごい速さで駆け巡る。
七色の光が空中で爆ぜる。
あまりの眩しさに目がくらみ、両手で目を覆った。
「今度生物関連の新書が入ったらとっておいてあげるわ。
あなた、よく買って行くものね。」
光の中で少女の声が頭の奥に響いた。


作品名:水晶の部屋 作家名:にょす