司令官は名古屋嬢 第3話『災難』
第1章 掃討
第3話 『災難』
【時間軸】…異次元暦42735年 1月25日 夜8時
【場所】…758号世界 東京県(旧東京都)新宿区 廃ビル
「明日で、あの『758革命』から5年経つな」
「早いもんだな」
「ああ、あの名古屋人のせいで、この国はすっかり変わってしまった……」
「しかし、今夜は寒いな」
とある廃ビルの暗い一室で、6人の男女がパイプイスに座って話をしていた。カーテンは閉め切られ、電灯の明かりが顔を照らしていた。みんなうんざりしている表情だった。暖房が無いらしく、口からは白い息が出ていた。
「中京都軍と世界保安省もうるさいしね」
女性の一人が言った。
「まったくだ。あいつらはCROSSの犬だからな」
その横の中年男性が言った。
「自衛隊さんの調子はどうですか?」
スーツ姿の若い男性が一人の男性に尋ねた。
「現在、富士で中京都軍のロボット部隊と抗戦中だが、残念ながら長くは持たないだろう。今後は本格的なゲリラ戦に移る」
そう答えた男性は、軍人らしい顔と体格をしており、脇には拳銃のホルスターが吊り下がっていた。
「我々にできることは?」
「やはり、ここ東京で大きなセーフハウスを確保することだな。戦車を何両か隠せるほどがいい」
バリバリバリバリバリバリバリバリバリバリ!!!
窓の向こうから、ヘリコプターの音が聞こえてきた。音の大きさから、かなりの低空を飛行していることがわかる。一瞬だけ、ヘリのサーチライトの光が、カーテンを照らす。ヘリは、このビルの横のビルのすぐ上をホバリング(空中静止)しており、機体に取り付けられているサーチライトの光が、前後左右にせわしく動いていた。
「いつもの巡回だろ」
うんざりした様子で中年男性が言った。
しかし、そのヘリはいつまでも同じ位置で滞空しており、普通の監視行動ではないようであった……。
不審に思った中年男性が、こっそりカーテンをめくって窓の外を見た。何人かは窓の外をのぞかないように言ったが、中年男性は聞く耳を持たなかった……。
すると、ヘリのサーチライトが中年男性を素早く照らす……。突然の光の直撃に、彼は思わず目をつぶった。そのため、自分に銃口が向けられていることに気づかなかった……。
作品名:司令官は名古屋嬢 第3話『災難』 作家名:やまさん