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むべやまかぜを 風雲エターナルラブ編3

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 時に主人公と敵対する役回りでもあるし、時に、教え導く役回り。たいていは主人公よりも年が上。頼れるアニキであり、父親役、人生経験が豊かな人物。そいつが船体の中心。だから、このキールの部分が物語からいなくなると作品が一時的に迷走したり滞ったりする。作品の重みにほかのキャラが耐えられなくなるのだ。うまく行けば、ほかのキャラが育って竜骨の役割を担ってくれることもあるのだが、普通はそういう幸運は望めない。だからこそ中心となる背骨が消えるとすれば最後の最後。最終話ということになる。
 「まあ……今回の作品は竜骨が死んだりすることはないから、あんまり関係ないか」
 丸山花世は思っている。学園物であれば、まあ、そこまで悲惨なアクシデントを起こす必要はない。
 「よし……。だいたい、これでいい……」
 キャラクターはすでに十五人超。それでも管理に手間取ると言うことはない。
 「あとは……キャラの名前。名前は……どうすっかな……」
 いわゆる『厨な名前』は丸山花世としても回避したい。どこにでもいる名前。どこにでもある名前。でも、ちょっと普通ではない名前が望ましい。
 「星と書いてティアラとか原子と書いてアトムとか……そういうのは勘弁だよな」
 自分が『雛菊と書いてデイジー』と名づけられたりしていたらどんなに悲惨であったか。丸山花世はぞっとしている。
 「狂った親が多いからなー……アイドルになった時の芸名とか。自分がなれなかったアイドルへの夢を娘に託すなんてどうかしてるよ。だいたい自分の顔を引き写したガキがアイドルになれるって思うほうがどうかしてる」
 丸山花世はボールペンを回しながら呻く。
 「……名前名前名前」
 講壇の上、ウーマンリブな教員殿は何かを喚いている。つまらなそうな顔をした生徒に英語の構文を教える教師は……楽しいのだろうか。そんな人生、生きる価値があるのか?
 そして。
 「ん……」
 物書きヤクザはボールペンを回すのを止めた。
 隣の席の少女。机に引っ掛けたカバンから皮のパスケースがぶら下がっているのが見えたのだ。
 
 ――西高島平⇔小川町
 
 「西高島平……か。西高島平、西高島平……」
 都営三田線、都営三田線、都営……。
 「うん……それはいいな」
 小娘は思った。
 「三田。春日。日比谷……うん」