看護師の不思議な体験談 其の七
事情を説明し、警報機の履歴を確認してもらった。確かに6階病棟に自動アナウンスが流れた履歴が残っていた。
不思議なのは、『1階正面玄関での火災発生』のアナウンスが、6階病棟にしか流れなかったことだ。誤作動や、タバコの煙による過敏な反応はたまにあるが、アナウンスがひとつの病棟だけに限定して流れるのは始めての出来事だった。
あまり自分の思いを表出しなかったあの患者様が、私たちに何か言いたいことがあって、1階まで看護師を来させたのだろうか。
そう考えると、『怖い』よりも、『納得』だった。
不思議な誤作動はその1回だけだった。
その後、看護師Oさんは日勤だけ出勤したが、2ヵ月後退職となった。精神的なショックと、看護師としての自信喪失が理由だった。しばらくして、クリニックで働き始めたOさんと話をする機会があったのだけれど、もう入院患者様とは関わる自信がなくなったとのことだった。
いつも熱い思いを抱いて看護に当たっていた先輩なので、できればまた復帰していただきたい。
作品名:看護師の不思議な体験談 其の七 作家名:柊 恵二