夢想家の夢
国際弁護士を目指しているらしい。初めは無理だと反対こそしたが、無駄な戦争をこれ以上起こしたくない、とまで言われちゃ、反対する言葉も潰えた。
飛行機の搭乗口の前で、最後の挨拶を交わす。
「いっちまうんだなぁ」
「うん。とーちゃん、俺がいなくても大丈夫だよな?」
「バッカ言うなぃ。おめーなんかに心配されんでも、俺ぁ元気だっつーんだよ」
「とーちゃんらしいや。かーちゃんと、母さんによろしくな」
「おう! おめーは何も心配しねぇで、自分のやりたいことをやってこい」
「ありがとう。今まで育ててくれて」
「バカヤロウ、さっさと行って来い」
「それじゃあ行って来ます。……父さんの夢、果たしてくるよ」
見てるか相川。あの日、お前に任された俺達の息子が夢を果たしに行くぞ。
戦争のない平和な空って奴を、そりゃもう大きな翼を背負ってな。
だから、お前もその空の上から見守っててくれや。
彼を乗せた飛行機の向こうに、大きな虹がかかっている。
飛行機は、その虹をくぐって、未来へと羽ばたいていった。
FIN