看護師の不思議な体験談 其の四
大体終わらせたところで、先輩スタッフが新生児室に入ってきた。何かあったのかと思い、私のほうから先輩に声をかけた。
「どうかしました?」
「いやそっちこそ」
会話にならない。もう一度聞いてみると…。
「いや、ナースコール鳴ったのよ。新生児室から。」
「えっ…」
「新生児室からわざわざ押すって、赤ちゃんに何か急変があったのかと思って」
ゾクッ…。背中が寒い。
「いや、押してないですし」
お互い苦笑い。
「そうよね、だって、○○さんも新生児室にいるんでしょ?」
(ええっ…??)
先輩の口から後輩の○○さんの名前が出たので驚いた。
「いえ、新生児室には私一人ですけど…」
「嘘―。だって、あんたの後ろ、誰か通ったってば。カメラで見たもの」
あまりのショックに言葉が出ない。慌てて、さっき部屋の角を見つめていた新生児を見ると、腹が満たされ幸せそうに寝息をたてている。
「二人で何さぼってんすか。ちゃんと仕事して下さーい。」
先輩の後ろを、すまし顔で後輩が通り過ぎた。
私と先輩は、顔を見合わせた後、恐怖でぎゃあぎゃあ言いながら新生児室を飛び出した。
やっぱり赤ちゃんって、私たちには持っていない能力を持っているんだろうなと思います。そんな話でした。
作品名:看護師の不思議な体験談 其の四 作家名:柊 恵二