アイシテルのカタチ
1
玄関のドアが開く音がして、ソファから立ち上がった。
「ただいま、翔大」
マンションのドアを開けたのは宮妹京介(みやせ・きょうすけ)。
そろそろ汗ばむ季節だというのに、涼やかにスーツを着こなした美丈夫。
さらには、大規模の不動産業を営む会社の専務であり、次期社長の地位を約束されている人物でもある。
一方、廊下へ続くリビングのドアを開けて彼を出迎えたのは、なんの変哲もない高校生の明石翔大(あかし・しょうた)。今春2年生になったばかり。
「おかえりー。ご飯は食べてきたんだよね?」
「うん、でも何か用意してくれたなら食べるよ?」
「おなか空いてないなら残り物として活用するから良いよ」
他愛ない会話をしながらリビングへと戻る。
翔大がソファへ座ると、京介も着替えもせずにソファへ腰を落とした。
「京介さん、ちゃんと着替えないと」
「うん・・・・でもちょっと休んでから・・・」
ネクタイを緩め、シャツのボタンを寛げる。
そうしながらももう一度ため息。
「何かあったの?」
ふと京介の顔を見上げながら翔大が問う。
「・・・うーん」
笑みを浮かべながら誤魔化すけれど、翔大はまだまっすぐに京介を見つめたまま。
「言いたくないならいい。仕事には口出さないって決めてるから。お茶いれてくるね」
ソファをたって、後姿はキッチンへと消えてしまう。
それを見ながら、またため息。
なんで、ああなのだろう。
翔大が甘えたくても甘えられない環境で育ってきたことは、想像がつく。
まだ高校生なのに、一人で上京して、アルバイトをしながら高校に通っていたのだから。しかも、家族からの援助はいっさいないままに。
彼と出会ったのは、偶然がいくつか重なったからだった。
それは、半年と少し前のこと。
玄関のドアが開く音がして、ソファから立ち上がった。
「ただいま、翔大」
マンションのドアを開けたのは宮妹京介(みやせ・きょうすけ)。
そろそろ汗ばむ季節だというのに、涼やかにスーツを着こなした美丈夫。
さらには、大規模の不動産業を営む会社の専務であり、次期社長の地位を約束されている人物でもある。
一方、廊下へ続くリビングのドアを開けて彼を出迎えたのは、なんの変哲もない高校生の明石翔大(あかし・しょうた)。今春2年生になったばかり。
「おかえりー。ご飯は食べてきたんだよね?」
「うん、でも何か用意してくれたなら食べるよ?」
「おなか空いてないなら残り物として活用するから良いよ」
他愛ない会話をしながらリビングへと戻る。
翔大がソファへ座ると、京介も着替えもせずにソファへ腰を落とした。
「京介さん、ちゃんと着替えないと」
「うん・・・・でもちょっと休んでから・・・」
ネクタイを緩め、シャツのボタンを寛げる。
そうしながらももう一度ため息。
「何かあったの?」
ふと京介の顔を見上げながら翔大が問う。
「・・・うーん」
笑みを浮かべながら誤魔化すけれど、翔大はまだまっすぐに京介を見つめたまま。
「言いたくないならいい。仕事には口出さないって決めてるから。お茶いれてくるね」
ソファをたって、後姿はキッチンへと消えてしまう。
それを見ながら、またため息。
なんで、ああなのだろう。
翔大が甘えたくても甘えられない環境で育ってきたことは、想像がつく。
まだ高校生なのに、一人で上京して、アルバイトをしながら高校に通っていたのだから。しかも、家族からの援助はいっさいないままに。
彼と出会ったのは、偶然がいくつか重なったからだった。
それは、半年と少し前のこと。
作品名:アイシテルのカタチ 作家名:律姫 -ritsuki-