一週間
一日目
「今日から一週間、海外出張なの。家を空けることになるから、それまで田舎のお婆ちゃんの家へ行ってなさい。」
そう言われてから、その日のうちに、リュックの中に最小限の荷物をつめた。そして、荷物ができたその時に、電車賃を渡され、家を出された。
「いきなりごめんね。じゃあ、一週間後に会いましょう」
玄関の外で母はそう言うと、ドアの鍵を閉めた。
母は右、僕は左へと歩き始める。
－なんて自分勝手な
そう思う心を押し殺し、僕は歩く。
今は、たまたま春休みで何もすることもなかったし丁度いいと言えば丁度いい。しかし、それなら一人で家に居てもいいはずだ。なのに、僕を家から追い出した母親。
何故かなんて、探りたくもない。
父親が他界してから、母はそういうことをすることが多くなった。
僕を家から追い出すんだ。決まって祖母の家へ・・・
電車を乗り継ぎ、二時間。山の中へ入っていくような気分。
祖母の家は、本当に山奥にある。山奥だけど、個人経営のスーパーというか、コンビニというか、そういうのもあるし、生活用品には困らないらしい。食料は自給自足に近い。
絵に描いたような田舎の風景。落ち着く。
ここへ来るのは久しぶりで、どこか懐かしい気もしていた。
最後に祖母の家へ来たのは、去年の夏だったかな。考えてみたらそれほど久しぶりでもないのかもしれない。
そんなことをうだうだ考えているうちに、祖母の家から最寄りの駅へ電車が止まった。降りたのは僕と、それから知らないおじさんだけだった。肩から落ちかけたリュックを背負い直す。ポケットから切符を取り出し、駅員さんに手渡した。
「ありがとうございました」
そう言われて、僕もぺこりと頭を下げる。
駅を抜けると、目の前に広がるのは田んぼだけ。ここから祖母の家までは、徒歩で30分かかる。ここからが疲れる。車が一台、やっと通れるような道を通る。一緒に降りたおじさんも僕の後ろから同じ道を歩いてきていた。
まるでつけられているような不思議な感覚。決してそんなことはないのだろうけど・・・