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くらたななうみ
くらたななうみ
novelistID. 18113
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一万光年のボイジャー

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シューは身震いした。今、視界の中を横切っていくそれは、噂に名高い『幽霊戦艦』そのものだ。自分が今、統一性を持つ証言者の一人に加えられてしまったのだ。

「これを見つけたのは、いつ」

視界の先で太いオレンジが集束していく。遠ざかっている。

「あの日、シューと、『幽霊戦艦』の話をしたすぐそのあとよ」

なんてことだ、とシューは思った。
結論は出ない、話は進展しない。そう思っていたのは自分だけだった。

「確実にそれを目視しないと信じてくれないかもしれない、と思った。だから、通過の規則性をずっと探していたのよ」

か細くなったオレンジがふいと潰え、跡地で何事も無かったかのように星雲が渦巻いている。

「これを見つけたとき、面白い、と思った?」

稲田の中で、彼女はおそらく自由研究に使う虫か何かを採集していて、泥だらけの手を几帳面にハンカチで拭いながら笑って言ったのだ。
噂じゃなくて、本当に何かが起こっているなら面白い、と。
そして彼女は、それが噂ではなく真実である証拠を捉え、シューの目の前に提示した。あの時の台詞に従うならば、エーミィは望むままの結果を出せたことになる。真実に限りなく近い噂を、真実だと証明するに至った、しかも数日で。
しかしその偉業を成し遂げた彼女は、ふるふるとかぶりを振る。

「いいえ」

噂となって広まるまでハックルベリーが誰にも言わず黙っていた理由が、シューにもやっと理解できた。

「オレンジ色が、こんなに怖いと思ったのは、初めてよ」

それなのに毎日それを探し、規則性を見出すまでやってのけたエーミィを、シューは心底凄いと思った。きっと万人の敬意に値する。
父親のあとを継いで素晴らしい天文学者になってくれるといい。

「父さんに、相談しようと思う」

だからシューは、できる限りのことをやって、この問題に終止符を打とうとたった今決意を固めた。

「『エンジェリック・アイズ』になら、きっと何か、映ってるよ」

大艦隊『フロンティア』の推進方向に、高性能レーダーを搭載した戦艦『エンジェリック・アイズ』が常駐している。
それは、シューの父親がメカニックとして働いている船でもあった。