小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
くらたななうみ
くらたななうみ
novelistID. 18113
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

一万光年のボイジャー

INDEX|16ページ/17ページ|

次のページ前のページ
 

「今から死ぬ『フロンティア』と、あたしたちの……ううん」

シューは戻ろうとじたばたもがいた。でも頭では、理科で習った法則に従い、物質は真空中では与えられたエネルギーの方向へ等速で永久に動き続けると知っていた。
何かを掴んでその運動を止めようとする手は、何度も、懲りずに空をきる。

「あたしの墓標になって、シュー」
「嫌だ!!駄目だッ!!」

この『エンジェリック・アイズ』から外へ飛び出して、完全に離れてしまったとき、シューは一瞬で光の速度に置いてけぼりにされる。
タキオンエンジンは持っていないにしても、秒速30万キロメートルで飛ぶこの船は、たった1秒で30万キロメートルの隔たりを、自分たちに生み出してしまうのだ。

「あたしの、墓標になって」

シューは、「エーミィ」、と彼女の名前をつぶやいた。
エメラルドグリーンの双眸が最後にシューを強く見つめて、そしてすぐに、それてしまった。


「酷いねあたし、ごめんね――大好きよ、シュー」


できればすぐに言葉を返したかった。ただ、大事な場面だから言葉を選ぼうと思って、一瞬躊躇して、結局それを言う前に暗い宇宙に放り出される。
そして、彼女が死ぬ音を聞くことさえも、数十万キロメートル越しにしか叶わなかった。