レジで前に並んでる奴のTシャツの背中のロゴでした
オレが自宅にひきこもっていた頃の話から始まり、二人で色々な場所を転々としていた話。やっと決まった就職先を半日で逃げ出した話や、信頼されていた顧客を裏切ってまで逃げた話……犯罪に関わる話はもちろん省いて。
「“逃げ出す”という言葉がよくないかもしれないわね。パパもママもずっと探していたのかもしれない。“もう逃げなくていい場所”を」
「……それが、この島ということ?」
「きみはそういう幸せな場所で生まれたんだよ、キャサリン」
オレがそう口を挟むと、娘はそのグレーの瞳を潤ませて、やっと笑った。
作品名:レジで前に並んでる奴のTシャツの背中のロゴでした 作家名:しもん