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卒業文集

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だけど叶いかけると、叶ってしまうと一気に寂しくなる。できることならずっと追いかけていたい。自分の隣にはきてほしくない。そう考えると自分の恋の結末はどこにあるんだろう。相手に好きになって欲しい、でも同じ目線まで下りてきてほしくはない。我ながら面倒くさい。
『追いかけたい背中』



ぐずぐずに丸まった紙をゴミ箱に放り込みながら真っ白な空間を睨む。まともな言葉が出てこないのはきっと、脳の味噌が溶けて流れてるせい。さらりとしたそれはまたティッシュを湿らせていく。上を向くと、今度は喉の奥に落ちてきた。
『もどかしい言葉』



感情において綺麗なものはひとつもない。例えば恋、例えば愛。それらは単なる思い込みとエゴで成立している価値観の押し付け合いだ。混じりっ気なしの不純物。それを綺麗だと思いたいのは当事者でなく傍観者。当事者は自分と相手のことしか考えてないからね。
『来いと会い』



揺れる目線は至近距離。短く持った煙草はいつの間にかギリギリまで燃えていた。灰はテーブルの上に落ちて、汚れた大人の一部になる。唇が離れた。ミントと胃液の味がする。
『パラライズ・キス』



目が覚めたときに隣に体温はいなかった。遠くで扉が閉まる音がして、なんだか一夜の過ちみたいだ、と秘密の後ろめたい関係をさして思った。掠れた喉でからりと笑う。汚い部屋に空しく反響するだけ、だけど。
『罠のような蜜』



青森のゴキブリがこれくらいだとするとさ、関東のゴキブリはこれくらいでさ。でもセミとゴキブリが怖いかって言うとセミだよな、だって突然落ちてくんだぜ?別にゴキブリはいるだけだけどセミは突然鳴くしさ。ミーンミンって、「今映画見てるから黙って」
『虫と無視と酔っ払い』



赤茶色の皮に爪を立てると水気と共に白い半透明の果実が顔を出す。どんぐりのような種を取り除いて口に放り込むと、幼い時分に感動したあの味とは少し違って思えた。冷たい異国の味の感動は水っぽく薄れて私にまだ熱いほうじ茶を飲ませた。
『ライチ』



自分をどんだけ偉いと思ってるの?そのくせ他人を俺様だって決めつけて自分勝手に糾弾してさ、一日の終わりのわずかな時間に我が物顔で文句を撒き散らす。自分を一番偉いと思ってることに気づいてない。だいっきらい、死んじゃえ、とは言えないけどさ。
『近親相関』



君のことがずっと好きでさ。愛してちゃっててさ。ずっと自分のもんにしちゃいたいって思っててさ。とうとう君に近づけたのにそんなつれない反応するからさ。僕は悲しくなっちゃってさ。涙も出ちゃうよね。止まらないよね。涙も、突き立てる鋏もさ。
『ジェノサイドなきみとぼく』



影を踏んで歩くオレンジ色の砂利道。ずっと前を歩いていたはずの影が不意に見えなくなったと思ったら、細く長くぼくの後ろに寝そべっていた。そろそろ先に行けよ、って言われてる気がして、ぼくはようやくきみのいないきみの家に手を合わせる決心をした。
『そこに居ないのは知ってるからさ』



明らかに赤い目元を隠すのはもうやめた。周りも同じように充血した目を前に向けて、恥ずかしそうに笑っている。脇に挟んだ卒業証書。肩を組んで泣き笑う。これで最後の、仲間との時間。そうだよ、僕は確かにこの空間が好きだったんだ。
『弥生朔日』



3年前の3月、私が宛先を間違えたラブレターを見て君は「友達からはじめよう」って言った。みんなから馬鹿だって言われてる君を少し知ってみたくて私たちは友達になった。それから私には君のおかげでたくさんの人と知り合って、友達も仲間もできた。
『答辞1』



君はいつだって後ろで笑っていた。ひどい喧嘩もしたし、だいっきらいとも言ったけど、嘘。君は私にとってすごく大切な存在。それは多分これからも変わらない事実だよ。君は私に友達からって言ったけど、君から離れる今になって、私からちゃんと言うよ。
『答辞2』



気がつくのに3年もかかったよ。馬鹿だね。好きだよ、君が。君たちが。
『答辞3』




作品名:卒業文集 作家名:蜜井