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続・聖なる日

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 声高に言うつもりはないのだけど、私はバレンタインデーという慣習が好きではない。
 相手に好意を示せる機会を与えてくれるものとしての有効性を否定はしない。でも、本当に恋心を抱いているのならば、自分の意志で告白のタイミングは決めるべきだと思う。
 高校生になっても自分の心の中に恋愛感情の芽生えを感じたことはなかったから、ずっとバレンタインなんて興味なかった。お父さんやお兄ちゃんにすらあげたことは無い。

 そんな私が一度だけチョコを男子に渡したことがあった。忘れもしない中学2年の時だ。
 相手はクラスメイトの篠原圭介。彼が私に対して少なからず好意を持っているのは なんとなく分かっていたし、今にして思えば その好意を利用している面もあったと思う。
 だから、バレンタインの日にお礼の意味も込めてチョコをあげてしまった。別に用意していたわけじゃない。当時クラスメイトだった西村由紀子ちゃんが配っていた義理チョコの残りを貰って たまたま持っていただけなのだ。彼が物欲しそうな犬みたいな顔をしていたから、「これあげる」と渡してしまった。

 まあ、そこまでは良かった。別に本命チョコじゃない。10円くらいで売られていた完全な義理チョコだ。でも、次の日の彼は妙なハイテンションで「来年はもっと大きいのにしてくれ」とか言ってきた。それで私は怖くなってしまった。

作品名:続・聖なる日 作家名:大橋零人