小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

看護師の不思議な体験談 其の参

INDEX|5ページ/5ページ|

前のページ
 


「今日は疲れるねー。脳症じゃろ?」
「うん…たぶん…。」
 私一人納得できないでいた。
「男の人が本気で暴れ始めたら、うちらだけじゃどうしようもないけんね。今日の当直は誰だったっけ?」
 先輩と後輩が当直医師の一覧表を確認に走っていった。
(いや、でも、いやに意識ははっきりしてたし…)

 ナースステーションへ戻ると、奥様は変わらずソファーに座っていた。
「○○さん」
 奥様に声をかけると、ビクッと体を揺らす。
「看護婦さん、あの人はどうしたんです?おかしゅうなってしもうたんです?」
 不安そう。奥様のそばにしゃがみ込み、手を取る。
「びっくりされましたね。手術をされた後によくあることなんですよ。」
(一応説明しておかないと…。)
「はあ…。あの人が、壁の中から女の人が出てきたって言いだして。私もどうしていいやら、分からんくって…。気味が悪いし…。」
 ブルッと身震い。
 奥様に説明し、部屋へと戻っていただいた。
 その後は特に変わったことも起きず、○○さんも順調に経過し、夜勤を終えた。
(やっぱり…、本当に何かおったんかな…)

 次の日、○○さんはいつもの温厚な○○さんに戻っておられた。何気なく昨日の状況を尋ねるが、例の女の人の話になった途端、口をギュッと閉じてしまうのだった。一言も話題にせず。「口にしてはいけない」という意志が強く伝わってきた。
 こちらも無理強いして聞くこともできず。結局あの時の○○さんの行動は、肝性脳症によるものということになったが…。

 本当にそうだったのだろうか。