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ばーさーかー・ぷりんせす!第4話

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2.

 どっぐぉし!

「きゃ! あ、あなたでしたのラッキー。驚かせないで下さい」
姫のローリングサンダーが炸裂した。軽く4~5メートル吹っ飛んだカバン持ちのラ
ッキーに忠告は届いているのか。顔、のど、ボディの急所にくっきりパンチのあと
が残っている。

「姫ぇ~、お着替えを~あ”~~」
失心した。
「…このしぶとさ、ゾンビ以上かもしれませんわ」

 魔鎧に着替えている時間もない。緩慢だがゾンビの群れは着実に回りを取り囲む。
「え~い~」
ルーシーが聖水を撒き、祈ることで安全領域を作った。とはいえこのままではそれ
も長くはもたない。
「姫さま、ここはわたしが頑張っちゃいまーす!」
魔法使いの見習い、マリアが腕まくりした。拙い呪文を唱え、魔法を繰り出すが小
さな電撃やぼんやりした火球しか出てこない。
「あれえ? 失敗だあ」
彼女の得意とするのは、対魔法使いのアンチマジック。自分と同じレベルにまで敵
の魔法使いを下げてしまう必殺技だが、逆に魔物撃退用の魔法の腕は稚技に等しい。

「んん~召喚ー。ナベシマより強いの、なんでもいーから出ろっ!」
マリアの祈りが天に届いたか。中空にいつもより大きな空気の歪みができ、閃光が
走った。

ぱり、ぱり。バリバリバリッ
「ンニャア~ゴー」
ぽんっと、白煙とともに現れたのは。…いつもと同じ黒猫のナベシマだった。だが、
その尻尾だけが実体化していない。
「?」
マリアが、皆が、ゾンビが見上げる中、ずるりと尻尾をつかんだ丸太のような手が
現れ、そのまま真下に人間がどさっと吐き出された。

「おーいてて。なんだよナベシマ、人をどこまで…おい、ここ、どこだ?」
 黒髪、小柄だが筋肉が寄り合わせられた体躯。足は短いが腕と胴が長い。身なりは
シンプル過ぎる『制服』である。石を削ったような強面にギロギロと目が動いた。

「あんた、だれ? ナベシマの…お友だち?」
マリアがおずおずと聞く。
「オレ? 足代ってんだけど。お前ナベシマのこと知ってんの? 友達じゃねえ
や、ありゃペットだペット。非常食でもいいけどな」
凶悪な物言いにも当の黒猫はゴロゴロと男になつく。
「なんだあ? 映画の撮影か? それともコスプレパーティー?」

 -別世界からの来訪者、足代秀雄は盛大に勘違いをしていた。