小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

そらとぶじてんしゃ

INDEX|3ページ/3ページ|

前のページ
 


公園に通っているうちにも、時間はどんどん過ぎています。
そしてまた、誕生日がやってきました。
ケンくんが水色の自転車から降りると、自転車は言いました。
「明日からもう、君と空を飛べないんだ。」

ケンくんは突然、心の中がぐちゃぐちゃになりました。
「どうして。どうしてもう一緒にいられないの。」

水色の自転車は静かに、ケンくんへ伝えました。
「もう君は、背も高くなったじゃないか。もう君は、ひとりでどこへでも行けるくらい大きくなったじゃないか。
もう僕じゃ小さすぎるよ。」

確かにケンくんはもう、あの時の小さい男の子ではなくなっていました。
自転車にも、両足をしっかり地面につけたまま、乗れるようになっていました。

「おおきくなったらのれないの?」

ケンくんの目から涙がこぼれました。

「今の君に、僕じゃもうだめなんだ」

「今日ものれたよ。つぎもちゃんとのれるよ。だめなの?」

「絶対に、いつか駄目になっちゃうんだ。」


もうすぐ家に帰る時間ですが、ケンくんは帰るのが嫌になりました。でも、水色だった空は、もう赤くなっていました。

「ケンくん」

自転車は優しい声でいいました。

「初めて僕を見つけた時、君は大きくなりたいと願ってた。そう願った通り、君は大きくなれたんだよ。それはとってもいいことなんだ。」

ケンくんはうなずきました。
自転車は、初めて会った時よりもずっとぼろぼろになっていました。


ケンくんは、今日が自転車とのお別れの日だとわかりました。
また涙があふれてきました。

「バイバイ。」
「バイバイ。」

ケンくんは、何度も公園を振り返りました。


ケンくんは家に帰りました。

家に入ろうとしたら、昨日はなかったものが、物陰に隠れているのを見つけました。
ケンくんはそれに近づいてよく見てみました。

かっこいい、ピカピカの赤い自転車でした。
明日の誕生日プレゼントに、おかあさんがこっそり買っていたものでした。

ケンくんはちょっぴりニコニコしたまま、いつも通り玄関のドアを開けました。

次の日、ケンくんはおかあさんと一緒に、新しい自転車に乗って公園まで行きました。
公園中を何度も何度も、ぐるぐる見渡しました。水色の自転車は、どこにもありませんでした。
おかあさんはそれをみて、「初めてなのに上手に自転車に乗れるね」と驚いていました。


明日は広場まで行ってみよう。ケンくんはそう思いました。
この自転車で、昨日まで見下ろすだけだった場所へ行ってみたくなりました。
作品名:そらとぶじてんしゃ 作家名:三星酸素