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そらとぶじてんしゃ

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お誕生日を楽しみにしていたケンくんは、お母さんに、「プレゼントは何がいい?」ときかれました。
ケンくんは「じてんしゃがいい!」といいました。
でも、おかあさんは「まだケンくんには早いよ」と、買ってくれませんでした。
お母さんはプレゼントに、クレヨンをくれました。
「おえかきなんて、もうかっこわるいのに。」とケンくんは思っていました。


次の日、ケンくんは一人で、外へ遊びに行きました。

「じてんしゃにはやくのりたいなあ」

ケンくんはいいました。
いつも一緒に遊んでいる友達は、みんなもう自転車を持っています。
だから、ケンくんは自転車がないとみんなと遊べません。
それでもおかあさんはこういいます。
「ケンくんはまだちいさいからあぶないよ」
ケンくんは、みんなの中で一番背が小さい男の子でした。

いつも遊んでいた公園に来ました。
他のみんなは、自転車に乗って、もっと遠くへ行ってしまっていました。

ケンくんは悲しくなりました。
「どうしてぼくだけちいさいんだろう」
「どうしてぼくだけじてんしゃがないんだろう」


ケンくんは、そんなことばかり考えてしまい、どうすればいいかわからなくなりました。
そのときです。

公園のすみに、前ここへ来た時にはなかったものがありました。
なんだろう、と思って、ケンくんはそれを見に行きました。

それはじてんしゃでした。
ケンくんでも乗れそうなほど小さい、水色でぼろぼろの自転車でした。

ちょっとかっこ悪いですが、ケンくんはなんだか嬉しくなりました。とっても乗ってみたくなりました。
「これはだれかのじてんしゃかな?」
そう思ってキョロキョロしても、ケンくんのまわりには誰もいません。


「僕は誰かの自転車じゃないよ」
自転車からそう聞こえました。まるで喋っているようで、ケンくんはびっくりしました。
「だれかのじてんしゃじゃないの?」
ケンくんは自転車にたずねてみました。

「そうだよ。前は僕に乗っていた子がいたけど、もういなくなっちゃったんだ」

「じゃあぼくがのってもいい?」
ケンくんはわくわくしてきました。
「いいよ」
「やったあ!」


ケンくんは自転車に飛び乗りました。両足はつま先立ちになりました。
それでも、持ち上げた右足でペダルをぐいっと踏み込むと、耳の横をすうっと風が通るのがわかりました。

さらにもう片方のペダルも踏み込みました。ケンくんは、ふわりと自転車が浮いたような気がしました。


「そう、僕と君は空を飛べるんだ。」
ケンくんがこげばこぐほど、水色の自転車は、ふわふわと空に引っ張られるように浮かんでいきました。

「どこにいくの?」ケンくんは少し怖くなりました。
「大丈夫だよ、君が僕に乗って、ペダルを踏んでいるんだから。君が動かすようにしか僕は進まないよ」

そう言われて、ケンくんは試しに、曲がったり前に進んだりしてみました。言われた通り、ケンくんの思う通りに自転車は動きました。
今ケンくんは、足が地面につきそうもないくらい浮かんでいました。

「もっととべる?」
「飛べるよ。上に向かって漕いでみて」


ケンくんは空を見ながら自転車をこぎました。すると、まるで見えない坂を登るように、自転車は浮かんでいきました。

ケンくんは大喜びで、どんどん上を目指しました。
ふと下を見下ろすと、公園の滑り台も鉄棒も、みんなケンくんの下にありました。

ケンくんはなんだか、ウキウキしているような、ハラハラしているような、不思議な気分になりました。夢をみているようでした。
作品名:そらとぶじてんしゃ 作家名:三星酸素