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有栖川煌斗
有栖川煌斗
novelistID. 23709
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生徒会長の好きなもの

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「よくわかったね。さすが会長。今日あの子休んでたからね。ちょっと気になっちゃって。だからお見舞いに行ってみようと思ったの。そして校舎をでてしばらくして私は非常に重大かつ深刻な事に気付いたわ。」彼女はそこで真剣な表情になる。

「重大かつ深刻?それはいったい何ですか。」

「私、彼女の住所知らなかった。」

「あなた馬鹿ですか。」

「ま、失礼ね。風邪の時にメールするのも悪いし、生徒会室のパソコンなら住所のってるって思ったから戻って調べたらそこに会長が来るんだもん。もうびっくりだよ。」

だからそれはこっちのセリフだという言葉を飲み込んだ。つまりエムちゃんを作ったことは里美がその一役を担っていたのだ。

「事情は分りました。それでも生徒会用のアドレスを不正に使用した事にはなりますし、これからは控えてくださいね。」

「はいはい。そうします。あ、でもまだ美倉さんの悩みは解決してないんだよね。」

どうしよか、と首をかしげる里美。彼女は中々のお人好しなのである。そのパーソナリティ故に美倉さんも彼女に相談を持ちかけたのだろう。

「それなら心配いりません。これから彼女のお見舞いに行くのでしょう?急いで校門に向かってください。」

「え、なんで。」

「工藤さんに校門のところで待ってもらっています。一緒にお見舞いへ連れていてもらえますか。」

そう。さきほど別れるときにそう頼んでおいたのだ。彼女は良く把握できない表情を浮かべたが承諾してくれた。いつまでもメールに頼っていては一向に事態は変わらない。
実際にあって話してみることが一番の解決なのだと思いますよ俺は。

「まったく会長には敵わないなあ。全部お見通しだったのね。」

里美は快活に笑う。

「そうだね。やっぱり直接話すのが一番だもんね。サンキュ会長。行ってくるよ。」

云うが早いか彼女はもういなかった。

先ほどのように。

行ってしまった。


これでうまくいくかはわからない。


最善の方法ではないかもしれない。


余計なおせっかいかもしれない。


でも何とかなるだろう。


そんな気がする。


心配はなかった。


工藤恵理子と美倉紫乃。そして高城里美はきっと友達になれるだろう。


3人で仲良く廊下を歩く日がくるだろう。


それはそんなに遠くない未来。




不思議とそんな確信があった。










『もしもし、煌斗さん。どうなさいましたか。珍しいですね。』

電話口からはいつもの精練された声。一度デジタルデータに変換されても彼女のその上品さは損なわれていなかった。

「メーミちゃん。僕はもっと雲雀と話をしてみようと思う。」

『いえ。今も十分話しかけていると思いますわよ。ストーカーと勘違いされるくらいには』

俺の決意を聞いた芽李美の反応は冷たいものだった。

「やっぱりストーカーはいけないことだったんだね。」

『今さら気づきましたのっ!?』本気で驚いていた。

「いやあ兄として妹ともっとface-to-faceの会話をしたほうがいいと思うんだよ。」

『いままでどのような会話をされてきたのですか、あなたは』呆れていた。

「あはは。…大切な事は目を見て離さないとね。」

そう。そうしないと彼女はいつまでたっても『エムちゃん』のままなのだ。

『……そもそもどうしてそのような話を急にされたのです?』

「少し、事件を解決していてね。」

『なんですそれは。もしかして煌斗さん、まだ学校にいますの?』

「うん。これでようやく帰れるよ。」

『もう!何かあったならわたくしを呼んでもらわないと困ります!』

なぜか彼女は突然怒り出した。

「いやいや。別に生徒会の関係でなにかあったわけではないし、それにメーミちゃんはもう帰っちゃった後だったしね。」

 まあ結果的には生徒会も深くかかわっていたのだが。というかすべての始まりは我が生徒会会計のイレギュラーな行動が発端だった。

『それでもです。私は副会長。あなたを補佐する役目があります。』

さすが責任感の強い彼女といったところだろうか。俺が仕事で残る時も決まって彼女は先に帰ろうとしなかった。

「そうか。じゃあ今度何かあったらメーミちゃんを頼ってもいいのかな?」

できるだけ優しく呟く。

『あ、は、はい。その…い、いつでも頼ってください。』

今度は一転取り乱していた。どうしたのだろう?

「ありがとう。それじゃあ僕もそろそろ帰ることにするよ。」

『ええ、そうした方がいいでしょう。今日は雲雀さんが夕食を作ると言っていましたわよ。煌斗さんが久しぶりに早く帰ってくるから張り切っているみたいでしたわ。』

「な、ななななな、それは本当か!?」

『わっ。いきなり大きな声を出さないでください。ええ。だから早く帰ってあげてください。』

「そ、そ、そうだね。よ、よしそうしよう。」



俺は電話を切り、直ぐに誰もいない生徒会室を後にした。