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有栖川煌斗
有栖川煌斗
novelistID. 23709
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生徒会長の好きなもの

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序章:生徒会長の名前は飛鳥煌斗





「以上は各部活での諸注意になります。部長始めそれに該当する生徒はこれを徹底するよう願います。会長就任早々、先生方に怒られたくないので是非協力してくださいね。おっと笑わないでください。副会長にリコールされてしまいます。あ、いや冗談ですよ。申し訳ありません、妄言でした。みなさんに選んでいただいた限りは力の及ぶ限り職務を全うするよう邁進していきますのでよろしくお願いいたします。」

「続きまして、校長先生からのお話です。」

感情を押し殺した進行の声が体育館に響く。
たった今「生徒会長の話」を終えたばかりの俺はフロア端に待機している生徒会役員の列に戻る。
「お疲れ様です。会長」
 俺、飛鳥煌斗(あすかきらと)は今月10月に南高校第34期生徒会会長に就任した。生徒会選挙で演説して以来、今日は初めて皆の前に立ち話をしたのだった。
役員たちは5人。それはまあ追々紹介させていただくとしよう。まずは5人の中で1人不機嫌そうな顔でこちらを凝視している彼女に焦点を当てる必要がありそうだ。

「どうだったかな。僕の話は。」あえて感想を求めてみる。

「…わかっていて聞いてらっしゃいますね。なんですか最後のリコール云々の話は。副会長であるわたくしへの嫌がらせですか。いえ、会長がそのようなことをなさらない事は重々承知しております。が、あんなことを言ったら生徒会の結束力を疑われてしまいかねませんわ。まあ最後以外はさすが会長と呼ぶべき、完璧且つ、流暢なお話でございました。それは確かにすごいと思いますわよ。すごいと思いますけれど―」

「いや、わかった。じゃああとでゆっくりメーミちゃんからのアドヴァイスを聞くとしよう。」

会の最中ということで我慢していたのか、俺の言葉がダムを決壊させたようなのであわてて穴をふさぐことにした。
 南高校生徒会副会長、徳佐芽李美(とくさめいみ)。高校1年で俺の後輩にあたる彼女は過日行われた生徒会役員選挙を経て、生徒会入り、副会長就任を果たした。その話し方には彼女の人格を表わすような気品がうかがえる。凡庸な人間が発したら不自然でしかない口調も彼女の口から出力されると、とたんにそれが綺麗な言葉として変換されてしまう。つまり生粋のお嬢様といって問題ない。一般な経済水準の家庭が大部分を占める我が高校ではかなり稀有な存在である。

「そ、そのメーミちゃんというのはやめてください。」

横やりを入れられ今度は一転顔を赤くして聞こえるか聞こえないかの声で呟く。

「ごめん、ごめん。つい癖でね。気をつけるよ。副会長。」

彼女の事は実は中学の頃から知っている。その頃から読んでいる癖が抜けない、という言い訳を俺は今したのだ。本音は彼女の恥ずかしがる顔が面白いから、なんていったらまた顔を真っ赤にして怒るだろうなあ。

「校長先生ありがとうございました。続きまして表彰式を行います。」

そうしている間にも朝礼は進んでいき、今月優秀な成績を収めた部活の表彰にはいった。
時刻は8時15分。始業8時30分を考えると想定より、少し押していた。校長の話が予定時間を大幅にオーバしていたのだ。俺は列を離れ進行役を務めている生徒会会計、高城里美(たかしろさとみ)のところへ向かう。

「高城さん。表彰式が終わったら、各委員の連絡事項を伝えて、すぐに校歌斉唱に入りましょう。」

「え、生徒会からの活動報告はいいの?」

「大丈夫。一般生徒に伝えるべきことはさっき僕の話で言いましたから。あとは連絡事項にクラス委員の式終了後の招集を加えてもらえますか。そこでさらに補足しておきます。」

「わかったわ。」

俺の話を聞きながら彼女は手にある進行表を書き直していく。これで時間内に終わるだろう。
 列に戻るとお嬢様副会長が複雑な表情でこちらを見ていた。


             *


時は変わり、放課後生徒会室。

「本日はお疲れ様でした。小さいですが、現生徒会の公での初仕事です。ぱっと気がついた事だと生徒集合の遅さや校長先生の長話中に貧血で倒れる生徒への対応、あとは校歌斉唱時の伴奏者、指揮者の不慣れさなど多々問題もありましたが概ねスムーズに進んだでしょう。他に何か報告すべきことはありますか。」

生徒会室では役員5人で報告会を開いていた。周りを見渡すが別段意見があるわけではないようだ。ちょうどいい。今日は早く終わらせる必要があるのだ。

「今会長がおっしゃった事くらいですかね。指揮者、伴奏者の件につきましては当初予定していた伴奏者が急遽風邪で休んでしまった事もありますので今後は心配いらないとおもいますわ。」
副会長芽李美が答える。

「よし。今日は何とかうまく回ったし、各委員への伝達もちゃんと機能していたようですしね。先輩からの引き継ぎも済んだし、月末には球技大会もあります。面倒な作業は後回しにして今日は解散としましょうか。」

「あれ、なんか会長急いでませんか。なにか用事でも?」

 俺の様子をみてそう聞いてきたのは書記の漆原佐久(うるしばらさく)。彼も1年生で今月より生徒会にはいってきた。ちなみに背は5人のうち一番低い。否全校生徒のうちで5本の指に入るほど低い。もちろん男女混合で。

「え、ああいや。そんなことはありませんよ。たまには早く帰るのも悪くないと思っただけです。」

 10月に入ってからは生徒会発足の仕事が忙しくて毎日帰るのがおそくなったからな。

「そうですよね。会長はいつも遅くまで残って仕事されていますし、僕らが5人でやっていけるのも会長の手腕あってこそです。」

 熱のこもった言葉をくれるこの後輩は俺に尊敬の念を抱いてくれるらしく、常に太鼓をもってくれたような発言をする。現生徒会の発足早々に

「僕会長のようになりたいんです!」

こんな男冥利に尽きるようなことを言ってくれたのだ。まったく可愛いやつめ。

「私も初めての司会緊張したし、今日は早くかえろっと。」

 言うが早いか高城里美はすでに生徒会室にはいなかった。
 そしてまだ発言のしていない二人目の副会長黒田静香(くろだしずか)はすでに生徒会室にいなかった。いやさっきまではいたよ。でもいまはいないんだよな。彼女仕事は素早くこなすが言葉数が極端にすくないためその存在がとても認知しにくい。もう片方の副会長が上品の塊のお嬢様なら尚更だろう。副会長が一人だと思っている生徒諸君もかなりいると聞く。
 いや、そんな些事よりも俺にはやらなくてはならないことがあった。

「あ、そういえば副会長はもう帰るのかな。」

 この場での副会長とはもちろんもう一人の今帰り支度をしている徳佐芽李美のことである。

「何がそういえばなのです?急ぎの仕事もありませんし、そうさせていただくつもりですけど。」

よし!想定どうりだ。普段俺が仕事をして残ると率先して自分も手伝おうとしてくれるが、こういうときは皆に合わせて直帰すると思ったのだ。

「へ、へえ。そうか。あ、待ち合わせしてたりする?」

言葉がつい震えてしまう。落ち着くのだ。クールダウン。しかしこのチャンスは必ず捕縛しなくてはならない。

「待ち合わせというか教室に―ってなんですか先ほどから」