看護師の不思議な体験談 其の弐
同じ夜勤スタッフにあわてて説明する。人に話すことで、ちょっと落ち着く自分。
看護記録の入力をしていた先輩は笑いながら、話し始めた。
「あたし、あんたの前に先に仮眠したでしょ。そん時さー…」
と、話し始めた内容に驚かされた。
「金縛りで動けなくって、またかぁって思ってて。そしたらさ、見ると、落ち武者がポットから湯のみにお湯ついでんのよ。」
もう一人の同僚がゲラゲラ笑っている。
「それ、完全にネタですよね?」
「ほら~、信じないと思ったから言わなかったんだってば。まぁ、いいけど。」
先輩はそう言うと、パソコンに向かい直し、記録の続きを打ち始めた。
「だって、『ポット』って。完全に現代に馴染んでんじゃないすか、その落ち武者。」
後輩はツボにはまったようで、ひいひい言いながら爆笑している。
私は全く笑えなかった。ちょっと苦笑いしたくらい。
そのおかげで、さっきまでの恐怖はなくなったからありがたかった。
でも、とりあえず汗びっしょりの白衣。着替えたいけど、着替えを取りに行くには地下にある更衣室に行かなければならない。
さあ、どうする??
…なんて、ビビリの私に行く勇気なんかあるわけない!
とある夜勤の話でした。
作品名:看護師の不思議な体験談 其の弐 作家名:柊 恵二