聖なる日
その後の授業は何だか分かんないうちに終わっていた。
俺が委員会のある教室に行ったのは4時40分くらいだった。中には俺を除く全員が座っている。
「ちょっと遅れちまったな」
小声でそう言って あいつの隣に座ったら、ムッとした顔で睨むんだもんな。まいっちゃうよ。
「これ読んどいて」
不機嫌面のあいつからなんかの企画書を渡されて、会議の間それっきり寺崎とは話さなかった。
委員会が終わると あいつが無言で帰ろうとするんで(こりゃ、まずい)と思って、「遅れたのは悪かったよ」と言ってやった。
最初は黙っていたけど、廊下に出たら振り返って、「そんなこと言うの珍しいね」と寺崎は少し笑って答えた。
「バレンタインデーだから、女の子に媚売ってるんじゃないの?」
まったく失礼なこと言う女だよな。
「馬鹿言ってんじゃねぇよ」
そう言って帰ろうとしたら、あいつが呼び止めた。
「ちょっと待ちなさいよ」
「あ? 何だよ」
「しょうがないから、これあげる」
「……」
その手には小さなボール型のチョコレートがある。
つまりは、これを俺にくれるってことだよ!! でも、これって西村がくれたのと同じ10円チョコなんだよなあ。
「ふ〜ん、まぁ貰ってやるよ」
そんな感じでクールに受け取ったけど、俺の心臓はバクバクしていた。