処女航海
「っていうか周りに遅れたくなかったんでしょ」
彼はまた、配慮の無い質問をぶつけてきた。少しだけ腹が立つ。けれどすぐに、図星だから腹が立ったんだと気づいて恥ずかしくなった。
「そうだよきっとそうだね」
お酒が入ってなかったら、こんなに素直に認められなかっただろう。私は、恥ずかしい人間だ。
「良くない傾向だ。自分は大事にしなきゃ、だよ。だって、」
「別に、」
「お前は、女の子なんだから。」
「……。」
オンナノコなんだから。異様に真剣な目で私を見る彼。目が合う。私は思わず目をそらす。その迷い無い眼差しに突き刺される、私のオンナノコの箇所を。だってこの男は、多分、こんな私を、オンナノコとして、性の対象としてのオンナとして、見ている。彼の視線に含まれる、不穏で、けれど本能的で避けがたい、何か、が、ある。と感じた。すぐに目をそらすけれど、私は先ほどからちゃんと彼の目を見れていない。