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むべやまかぜを 風雲エターナルラブ編2

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 「アネキ使うんだったら、もっといきのいい若い原画にしたほうがいいんじゃないの?」
 丸山花世は遠慮を知らない。そして、大井弘子は止めない。妹が言わないのであれば自分が言おうと思っていることであるから。
 「越田も新しい会社になったので妙にやる気になっていますし……」
 市原は何を考えているのかぼつぼつと続ける。
 「それに、僕も、若い人のこととかよく分からないんですよね……イラストレーターのこととか、今どういう人が出てきているのか、調べるのももう面倒っていうか……」
 「……」
 姉妹は渋い顔のまま顔を見合わせる。
 「え、ええと……」
 丸山花世は目を白黒させている。まさか相手がそんなことを言いだすとは思ってなかったのだ。
 ――八百屋なんですけど、今どういう野菜が市場に入ってんの分かりませんとか、魚屋ですけど、今、セリ場に何があるのか調べるのしんどいですからって言うのと同じだよな、それって……。
 それはエグゼクティブ・プロデューサーなのか。そういうプロデューサーがいていいのか。それは職責の放棄ではないのか。
 ――このおっさん、ほんとに大丈夫なのか?
 丸山花世は市原の人間性そのものを危ぶんでいる。
 「越田さんという原画さんについては、私も危ういと思っています。拝見しましたが、絵柄が古くなっている。率直な意見ですが」
 大井弘子が妹に代わって言った。
 「イラストは……最初にデビューした時がピークで、あとは落ちるばかりです。上がることはありません」
 大井弘子の言葉は重い。市原は腕組みをして沈黙する。
 「……私たちは外部の人間ですから、そちらの決定についてまでは口を挟みません。ただ、三万本という数字は楽観的だと思います」
 「……」
 「去年と今年では状況は違います。ゲームの世界での一年はほかの業界の三年と捉えるべきでしょう。実際、プレステのゲームのリリース本数は激減しています」
 「ええ、ですからうちでもPSPのタイトルを……」
 「私達が関わるのはPSPのゲームではありません」
 大井弘子は断定した。
 ――PSPのことなんて、今カンケーねーよな……。
 どうも……市原という男は苦しくなるとおかしなところで変な理屈をこねるという悪い癖があるようである。筋違いの言い訳癖、というべきか。