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しっぽ物語 2.人魚姫

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 ナースコールを鳴らし、駆けつけてきたWと看護師に笑顔を見せる頃には、興奮も収まり、本来の落ち着いた表情で接することが出来る。
「管が抜けたときは、すぐ連絡してくださらないと困りますな」
 自分よりも一回り以上年下のBに、Wは軽蔑とすら思える表情を向けた。だがBは、全く気にならなかった。
「彼女の告白を聞いていたのです」
「それも結構でしょうが、これが」
 針を刺しなおす看護師の手つきを確認しながら、Wは言った。
「途絶えると、彼女は物凄い激痛に晒されるのですよ」
 いつまで経ってもBが柔和な微笑を浮かべたままなので、諦めたらしい。それ以上は言わず、帰りがけにちらりと、カーテンで仕切られたベッドを覗き込む。
「まずいな、チアノーゼだ。泡を吹いてるぞ」
 乱雑に老女の腕を放り出した看護婦が後に続く。にわかに騒がしさを増した部屋に、夜の訪れを示す蛍光灯が光った。窓の向こうに眼をやれば、もう太陽は沈んでいた。


 駆けつけてくる医師たちを尻目に、Bは篭った息をついた。開かれることのないカーテンの内側では押し合いへし合い、もうしばらくはあの状態が続く。女の身体を弄繰り回し、ばらばらにしてから繕う。それに比べ、奥で横たわる老女のなんと清閑で神々しいことだろう。

 晴れた日の湖水のように静まり返った自らの心に浸りながら、Bは悠々とその場を後にした。