CROSS 第11話 『奇妙な夜間行軍』
「クソ!!! 開かない!!!」
山口は非常口のドアを開けようと、何度もコックをひねっていた。しかし、非常口のドアは、きしむ音を立てるだけで、全然開かなかった。
そこに妖夢がやってきて、山口をどかしてから、思いっきりコックをひねる。
バキン!!!
その音とともにコックが取れてしまった……。
「……力自慢なら、他の場所でやってくれるか?」
山口が嫌味を言ったが、妖夢は無視し、彼女は背中の二本のうちの1本の鞘から刀を抜いた。そして、それを非常口のドアに向かって振り下ろした。
「うわ!」
刀は山口のすぐ横を通った。
刀を振り下ろした次の瞬間、ドアは縦方向で真っ二つに斬れた。真っ二つになったドアは、そのまま外側に落ちていく。幸いにも、
泥が跳ねる音はしなかった。つまり、すぐ下は陸地だということだ。機体は、岩か何かに乗っかっているだけなのだろう。
ドアを真っ二つに斬った妖夢は、そのまま外へ飛び出す。妖夢が着地した場所は、沼地ではなく陸地のようだったが、彼女はそこで立ち尽くしたまま、動きを止めていた。彼女の近くで漂っている霊魂(妖夢の半身)も動きを止めていた。
「?」
山口は不思議に思いながら、特殊ゴーグルを装着し、『FN ファイブセブン』という愛用のピストルを構えた。
そして、山口も非常口から外に出た。機内に流れこんだ泥は、すぐそこまで達していた。
山口が降り立った場所は湿っぽい陸地だった。辺り一面は暗闇で、エアリアルの機体が沼の中に沈んでいく音以外は静かだった。山口のすぐ近くで、妖夢が立ち尽くしていた。
「どうした?」
山口が声をかけると、妖夢はビクッとしていた……。
「……私、暗いところは苦手なんですよ」
妖夢が、少しだけ言葉を震わせながらそう言った。
「ああ、そうだったな。 それじゃあ、少しは明かりがある機内に戻っているか?」
山口が半分沼の中に沈んでいるエアリアルのほうを指さして言った……。
「今、救助を呼ぶから、30分ぐらい辛抱しろよ。暗闇に慣れるいい機会かもしれないぞ?」
山口がクスクスと笑いながら言った。
「早く呼んで!!!」
妖夢が、冷や汗を流しながら怒鳴る。半霊部分の霊魂も山口に促していた……。
作品名:CROSS 第11話 『奇妙な夜間行軍』 作家名:やまさん