サイコシリアル【5】
「戯贈は、どうなんだ?」
僕は戯贈に聞いた。
戯贈だって両親を九紫戌亥に殺され、九紫戌亥を探していたのだから。
「そうね。私は何がどうであろうと九紫戌亥を許すことが出来ないわ。今だって憎い。でも、だからと言って私には何もすることが出来ない。復讐とは、とても醜い行為だから。人殺しと同等に値する愚行よ」
「それでも気が済まないだろ?」
「そうね。でも、仮に私が九紫戌亥を殺そうとしたら涙雫君は止めるでしょう?」
「そりゃあ・・・・・・止めるだろうな。戯贈は殺し屋であっても見方を変えれば殺し屋ではない。殺しを殺す殺し屋が、本当の意味での殺し屋、つまりは犯罪者になってしまうからな」
「そういうことよ、涙雫君」
「どういうことだ?」
「本当に肝心な所では理解力がないのね、涙雫君」
そう言って、戯贈は笑った。
正直驚いた。それは微笑みでもない笑顔だったから。今までに僕が見たことのない、戯贈の表情。屈託のない笑顔。
僕は、一発で参ってしまった。一瞬でやられてしまった。
いや、やられてしまっていたのを更に追い打ちをかけられたと言うべきなのだろう。
「私は、涙雫君が嫌がること軽蔑することはしたくないの。だって、それは涙雫君に嫌われること、軽蔑されることを意味するでしょう? 私はそれが嫌。こんなこと一つ思うのも今の私は、重い女として見られるんじゃないかって不安なのよ」
馬鹿だな、戯贈は。
考えすぎもいいとこだ。
作品名:サイコシリアル【5】 作家名:たし