Minimum Bout Act.01
No.2「組織」
カッツとシンとトレインの3名は、ドルクバ国内でも1、2を争う巨大機械工場のリード社へとやって来た。
機械産業で財を成したこのドルクバは、言わば職人の国だ。
広大な国土のドルクバは殆どが砂漠で、工場の明かりは夜でも消える事は無い。人口の3分の2は工場従事者で他国からの移住者も多い。しかもそのほとんどが貧困国の民だ。
誰もが仕事を求めてやって来る。しかし現状は厳しいもので、安い給料でまるで奴隷のように働かされ、働けなくなると国に無理矢理送り返されるという話しは後を立たない。それでも彼らは少しでも国の家族にいい暮らしをさせるため、汗と油にまみれて働きつづける。
真面目な貧民国民を安価に雇い生産されるドルクバ産のソフトとハードは品質が良く、特にハードは海外でも高値で取引される。おかげで事件や事故も機械に関するものが多く、多国籍であるが故のID偽造も後を立たない。
働く場所を求めてやって来る移住者は、この偽造IDの購入金額を支払うために必死で働く。本末転倒だ。
もちろんそのような不正を行なっている会社ばかりではない。きちんと貧民国と契約を結び、国からの認可を得た雇用契約の元に人を雇っている優良企業も多く存在する。ただ、それ以上に夢を求めて移住して来る輩が多いのだ。
先の殺害されたエレン・リードのように使われなくなった製造機械用のICチップを改造して全く新しい人物のIDを作り、政府機関の端末に不正アクセスをしてIDを根本から操作する連中もいるが、これはよほどのハッカーであろうとも個人ではほぼ不可能である。
元来IDは生まれてすぐに体の中に刻まれる体内型と、カードとして持ち歩く体外型の2組で1つとされる。よって、カード型のIDを作ったとしても、体内型のIDを書き換えなければ意味が無いのだ。
体内型IDを管理しているのが各国の政府ということになり、全宇宙的に統括しているマザーコンピューターに至ってはその存在自体を知る者がほとんど存在しない。故に大きな犯罪組織のように、情報、財力共に相当な力を有していなければ政府の端末に不正アクセスした瞬間にお縄となる。
作品名:Minimum Bout Act.01 作家名:迫タイラ