Minimum Bout Act.01
トレインが大きな体をドアの中へ滑り込ませるのを見届けると、カッツは腕組みをして床を睨んだ。
「何か気持ち悪いな」
「エレン・リードが2人。1人は死んだはずなのに生きていて、もう一人はついさっき殺された……カッツ、リード社へ急ごう」
「俺だって今すぐ行きてえよ」
「カッツ! ちょっと来い!」
2人がリード社へ向かう決意をしていると、中からトレインのがなり声が飛んで来た。ただならぬ様子に2人は室内へと急ぐ。
「どうした!?」
カッツとシンは、トレインがかがみ込んでいるバスルームへとやって来ると、その足元に広がるタイルに目を凝らした。
「これは……」
タイルの数枚が剥がされていて、そこには大量のICチップがビニールの袋に詰め込まれて埋められていた。
しかしどれも焼かれた後らしく、表面は焦げ、中身の多くがむき出しになっている。
「殺されたエレン・リードは、組織の人間だったみたいだな」
「ーーー口封じか」
トレインとカッツが真っ黒のICチップに呟くと、シンは神妙な顔でカッツを見た。
「カッツ。リード社に警察が行っているんだよな?」
「ああ」
「リード社は間違いなくID偽造に関わっている。組織との繋がりがあるとしたら、俺達の依頼者である謎のエレン・リードが捜させようとしているパスト・ヤーセンって男はその証拠を持って逃げたんじゃないのか?」
「ちょっと待て、パスト・ヤーセンだと?」
シンの言葉に反応したのはトレインだった。
「何だ? 知ってるのか?」
カッツがシンの言葉を噛み砕いていると、トレインは難しい顔をして指で2人を自分の近くへ来るように示した。
「俺の知り合いの息子がリード社で働いていて、名前がパストって言うんだ。そいつは少し前に会社を辞めたって聞いたぞ? それにリード社が組織と繋がりがあるという噂は、警察でも聞いたことがない」
「だがどう考えてもおかしいだろう? 俺達の前に現れたエレンは10年前に事故死してるんだ。そしてここで殺されたエレンも10年前から出歩いてなくて、さらにはID偽造に使われたと思われる証拠を持っていた。そのパストがトレインの知り合いだとして、じゃあ何故エレンは行方不明だと言って俺達に捜索を依頼したんだ?」
「あーうるせえ! 取りあえずリード社に行ってみればいいだろ? ここでごちゃごちゃ話してたってどうせ分からないんだ」
作品名:Minimum Bout Act.01 作家名:迫タイラ