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Minimum Bout Act.01

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No.1「ようこそ、MBへ」




 見上げれば遥か上空にまで伸びる超高層ビル。横を見れば今にも崩れそうなボロアパートやしみったれた店が並ぶ下町。心無しかどぶ臭い匂いもおまけで付いて来る。
 ここは近隣の国の中でも一番貧富の差が激しい国、ベニーランド。全長わずか500キロメートルの小さな国だ。
 その小さな国の貧民街の外れにある一軒の廃ビル。その地下に住む奴等がいた。
 廃ビルとはいえ一応買い取ったオーナーは存在する。
 名前は“カッツ”30代後半の、やたらと背の高い、筋肉質な男。
 そしてそこに住み着いているのがあと2人。“シン”という、冷ややかな切れ長の目をした20代後半の男で、バランスの取れた体つきをしている。いわゆるイケメンだ。もう一人は唯一の女で名は“ルーズ”。眼鏡をはめていて、30代前半くらい。赤茶色の長髪を後ろで一つに束ねている。
 彼らは探偵……と言えば格好は良いが、実際は『人探し屋』という胡散臭い屋号を看板にしていた。
 一夜で大金持ちにも一文無しにもなれるこの国は、世界中から色んな連中が集まって来る。人の集まる所は身を隠すにはもってこいだ。
 金が動く所に犯罪有り。犯罪ある所に消える人間有りという事だ。
 依頼によってはターゲットが既に死亡している場合もある。しかしそれでも彼らは探し出す。例え骨の一片しか残ってなかろうとも、必ず探し出して依頼主に引き渡す。
 彼らはどんなに小さな手がかりからでもターゲットを探し出し仕事をこなすため、いつしか付いた呼び名が『探し屋 Minimum Bout』通称『MB』。

 そして今日は朝からカッツのご機嫌は斜めだった。


 「ったくよお! 何なんだよあのガキはっ!?」
 ガンッ!
 と近くのテーブルを蹴って八つ当たりをする柄の悪い男。彼がカッツ。
「文句言うなよ、客だぞ。……一応」
 それを尻目に綺麗な顔をした男、シンが目の前に置かれたコーヒーに口をつけながらたしなめる。
「お前も“一応”とか付けてんだから、腹ん中ではムカついてんだろ?」
 まだ怒りの収まらないカッツは、テーブルの中央にやけに品よく並べられたクッキーを乱暴に鷲掴みにして口の中に放り込む。
 ゴリゴリとクッキーが噛み砕かれる音が、カッツの怒りを見事表現している。
「あんな事で一々怒ってたら身が持たないわよ」
 階段に寄りかかってコーヒーを飲んでいた眼鏡の女、ルーズが言う。
作品名:Minimum Bout Act.01 作家名:迫タイラ