ともだちのしるし
四月二十三日(金)「白の願い」
おねえちゃんがいなくなった公園は、急にさみしくなった。
「スランプは、自分で何とかするしかないからなあ……。あたしも良く陥るよ」
いつも愛華ちゃんと呼ばれてたおねえちゃんが、そう言った。白は顔を向けたけど、何も言わなかった。何か言っても、届かないのを知ってたから。そのおねえちゃんはため息を一つついて、つらそうな顔をしながら帰って行っちゃった。
また一人になった。おねえちゃんは『ごめん』って言ってたけど、悪いのは白の方。あんなにダメだよって言われてたのに、はしゃいで、おねえちゃんの絵を……。
こんなはずじゃなかったのにな。白は、こんな事をするために、ここに来たんじゃなかったのに……。おねえちゃんにひどい事をしちゃった。どうしたらいいの? どうしていいのか分からないよ。だれかおしえて。白におしえて。だれもおしえてくれないのは分かってるけど、おしえてほしいよ。一人はやっぱりさみしくて、悲しくて……。
「うっ……。うっく、ひっ……っく」
ほら、やっぱり涙が出てきちゃった。白はどうしたらいいのかなあ……? あ、なんか体がおかしいな。なんだか体がさむい。手が白くて冷たい。
「もう、あんまり時間がないのかも……」
体を小さくかがめて、両腕でぎゅっと自分を抱きしめた。涙がポタポタと落ちていった。
「おねがい、もう少しだけ待って……、もう少しだけおねえちゃんと一緒にいさせて。だって、だって白はまだ……、おねえちゃんに恩返しをしてないから……。おねがい……」
首に手をあてると、鈴があった。チリチリ、チリリ。鳴らしてみた。緑のリボンと一緒に、ちゃんとここに付いてた。良かった……。
何だか、体がふわふわして、力が入らなくって、目の前が真っ白になってきちゃったよ。ブランコも、すべり台も、お花たちも、みんな真っ白に見える。頭の中もグルグルと回っている感じがする。どうなっちゃうんだろう。このまま、もうおねえちゃんに会えなくなっちゃうのかな……? そんなのイヤだよ……、おねえ、ちゃん……、おねえ……ちゃ……。
そのまま地面に倒れる白を、夕日だけがやさしく見ていてくれた。