ブローディア冬
ばあちゃんが並べた深い皿にすかさず卵を置いていくルイ。ルイはばあちゃんが大好きだ。今度はカセットコンロのボンベを取り替える作業を率先してやりはじめた。
「やっぱ有り得ねー」
その様子を見ていた石間がぼそっと呟く。俺が声を出さずにん? と見やると、
「あの金パ、できすぎ」
と困ったような笑顔でささやいた。
ああ、と思う。くりくりとひねられる石間の髪は冬休み仕様。明るい茶色は黄色っぽくて、金髪みたい。電車の中でその横顔を盗み見ながら「どうして石間だとヤンキーっぽくならないんだろ」と惚れ惚れしたものだけど……
本場物の金髪を見せつけられて、ちょっと気恥ずかしくなったのかも。そう思って、風呂上がりでおとなしく萎んでいる襟足を摘んで捩じってみたら、石間はお返しに俺の脇腹をつねって笑った。
「シン。たまご」
「ありがと……」
……石間の殺気が見えた。
「進二郎!」
「えっ、石間なに(急に下の名前で……)」
「俺のたまご取って」
「ハイハイハイね」
「おばあさんには言ってないっす!」
「いいじゃないのよ、ホラ食べ頃だよ」
山盛りのご飯を口に突っ込んだ石間はいつもの石間とちょっと違う雰囲気で戸惑ってしまった。反対側の隣りに座るルイは春菊を苦い顔で囓りながら俺の肩を叩く。
「シン、イシマのこと紹介してくれよ」
ばあちゃんが豆腐をちっちゃくしている横で白滝を箸でつまんだ石間が顔をあげた。
「ルイ、石間晃くんだよ。クラスの人気者」
そう紹介して自分で傷ついた。
「石間晃です。冬休み中よろしく」
「はあ、こういうのをイケメンていうんだべか」
ルイはそう呟いたばあちゃん、向かい側にいる石間、と順にほほ笑みかけた。
「シンの親友とか?」
「いや、えっと」
親友ではないよな。石間の親友は江差だし、俺の親友は三好だし。またちょっと傷ついた。
「秘密っす」
「石間……」
「や〜ねぇ、ほらルイもあいさつしないば」
「ウン」
箸の止まってしまった石間のお椀に新しいたまごを横から投入。石間は意外とさわやかにサンキュ、と言った。
「ワタシは−−−−−。略してルイです」
「略してじゃなくて愛称は、でしょ」
「デス」
石間は眉間にしわを寄せた。
「−−−……−−−?」
「イエス、−−−−−〜!」
俺もばあちゃんもルイの本名は聞き取れたことがない。今回もやっぱり分からない。石間は……どうだろ。ばあちゃんとふたりで石間を見守ったけど、ぽっかり口を開けてルイを見ている様子では、まあ、うん、そんなところだろう。
「アメリカから農業の研究に来てるんだ。ドイツとイタリアと北欧の血がまじてお」
「混じってるの」
「マヂッてるの。22歳ね」
石間がどうも、と手を出して二人はスキヤキの上で握手をした。石間の手、綺麗だな。ルイも石間も手が大きい。