ブローディア冬
冬の番外-本日は快晴
ホッホッと白い息を吐いたと思えば、タバコを吸う大人みたいに細く長く吐き出して目を伏せたりする。
石間の青のバーバリーのせいで、首をすぼめたり顎を引かなかったりで顔がよく見えない。石間の視線より下にいる俺の事なんかは全部見えてるんだろうけど。石間と並んで歩くことが増えてからはこまめに風呂に入るようになった。フケなんて見せられやしない……なんて女の子みたいな考え。逆にムズムズするよな。
「木野」
「なんだ」
固く雪玉を握っていた石間。それを勢いよく電柱に命中させて、濡れて切れそうなくらい冷たくなった指で耳たぶを摘まれた。
少しびっくりしたが、表情には出さない。素直に冷たいと言う。
「あはは、あったけ」
「耳ちぎれたらどうすんだよ、トーショーで」
「俺が舐めて溶すよ」
「……唾液が凍る」
石間を見上げれば、もう彼の視線は通り掛かった焼芋屋に注がれていた。
石間はさらっと言う。舐める、とか。俺はその手を暖めてあげるとかさえ言えずにいて、唾液という言葉一つにも卑猥だと思って頬を染めかけている。寒いからばれて無いけど。
夏が過ぎて寒くなって。少しだけ彼のことを、俺は知るようになった。
寒いからばれて無いよ。石間の指が震えてたのは、寒さのせいだけじゃないってことも。
おわり