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なつきすい
なつきすい
novelistID. 23066
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Another Tommorow

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 もしも。母の死、という出来事それ自体を変えられなくても、本当に大和の言うように残された人をあの予知が救ったというなら。その結果として、現在が変わっているというなら。
「……なにもできないってことは、ないのかな」
 飛鳥はぽつりと呟いた。大和がじっと飛鳥の目を見る。どこか気恥ずかしくて、「独り言だよ」と言ってから、ふと思いついたことがあった。
「なぁ、大和。お前彼女とかいる?」
「は?」
「大晦日、カウントダウン初詣行ったりする?」
「……今のところ、そういう予定はないけど」
 それがどうしたんだ、と言う大和に、飛鳥はにたりと笑って続けた。
「じゃあ決まりだな。お前、海鮮と水炊きどっちが好きだっけ」
「どっちも」
「そしたらネットで画像でも見て好きなほう選べ。お金に糸目はつけないから、うち帰ったらネットで探して、一番美味しそうな寄せ鍋セットのお取り寄せをしといて。大晦日に届くように」
「え」
「無理なら、明日俺注文しとくけど、できるだけ早いほうがいいよな。早く注文しないといいのが売り切れちゃうかもしれないし、善は急げだ」
「兄さん、どういうことだよ」
 怪訝そうな顔をする弟に、飛鳥は、全力で強気な顔を作って答えた。
 ここ数日つくり方をどうしても思い出せなかった、兄の顔だった。
「大晦日、俺とお前とお父さんとおじいちゃんと4人で、お取り寄せの豪勢な鍋で年越しするぞ」
 だから、絶対に死なない。あの予知を変えてみせる。
「そんでもって紅白は白組が勝つ」
 飛鳥のその意を理解したのか、大和も少しずつ口元が上がってきた。
「じゃあ、食べられなかったら一生後悔するぐらい、凄いのを頼んどく」
「ああ、頼んだよ。お前のセンスに任せるから」
 今朝までの弱気が完全に消えたわけじゃなかった。まだ怖い。あの虚無を思い出すと、身体の芯から震えが湧き上がってくるようだった。もう一度蓋をかぶせることこそできたけれど、心の奥深くから響く自分の悲鳴はまだ聞こえている。
 けれど、まだ動ける。まだ抗える。なにかできることはまだあるはずだと信じたい。
 変わる可能性がほんのわずかでもあるなら、諦めない。
「俺はまだ死なないよ」
 自分に言い聞かせるように飛鳥は口にした。
「絶対、生きてやる」
 ぐっと力を込めた右手は、もう震えてはいなかった。
作品名:Another Tommorow 作家名:なつきすい