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せき あゆみ
せき あゆみ
novelistID. 105
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魔法使いの夜

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 ここは行き止まりで、あとは山の畑へ続く道だけだ。通りのほうがパトカーでふさがれていれば、もうこの道しかない。
「よし、バリケードをつくろう」
 ケンの指示で薪やわらの束を道に重ねて道をふさいだ。念のためにまきびしもまいた。ぼくたちはそれぞれ手に目つぶしをもって、生け垣のかげにかくれた。
「ジュン。いったいなにやってんの。夜回りじゃなかったの」
 ぼくたちがいつまでも騒いでいるのでおばあちゃんが外に出てきた。
「子供がそんなことして……。あぶないよ。家にはいりなさい」
 でも、このことはぼくが自分をかえるために必要なことなんだ。
「おばあちゃん。どうしてもぼくたちはこれをやらなきゃならないんだ。おばあちゃんは中にいて」
「ジュン」
 おばあちゃんには悪いけど、今度ばかりはいうことをきかなかった。
 バイクの音が聞こえてきた。通りからこの道に入ってきた警官の声もする。けれど間道からめちゃくちゃに走ってきたバイクのほうが早かった。
 バリケードがあるのに気がついた犯人は急に曲がって、生け垣をつきやぶって庭にはいってきた。
「うわ」
 あまりにも突然だったのでぼくたちは度肝をぬかれてしまった。バイクが横転して転がり落ちた犯人はすぐに起きあがってバイクに乗ろうとした。
 ケンがはっと気づいてみんなに号令をかけた。
「みんな、目つぶし」
 その声で我に返ったぼくたちは目つぶしを投げた。
「うわ、なにをする。ごほ、ごほ」
 犯人は怒ってぼくたちのほうに向かってきた。そのときノブがコウモリを袋から放した。いきなりコウモリが目の前に飛び出したので男はひるんだ。そのすきにみんなで一斉に男の体にとりついた。
 警官の声が近くなった。男は暴れている。もう少しがんばればと歯を食いしばってぼくは男の腕をつかんでいた。
「ええい。はなせ」
 ところが男はものすごい力でぼくたち五人をふりはらった。ぼくたちは吹っ飛ばされてしりもちをついた。
「くそ」
 ノブは防犯ボールを投げた。やった。背中に命中した。男の服はオレンジの蛍光色で光った。これならどこへ逃げようと見失うことはない。男はバイクにのって畑のほうへ逃げていった。
 ケンもノブもヤスも服は破れ、かなり傷だらけだ。ぼくはさちこさんが貸してくれた皮のつなぎと革の手袋のおかげで、顔を少しすりむいただけだった。トシはというと元々頑丈な体なのでかすり傷ですんでいた。
「君たちだいじょうぶか? 犯人は?」
 警察の人たちがやってきた。
「あっちです。畑に……」
 そのとき、バリバリバリ……。
 けたたましい音にみんな驚いて振り向いた。みると、改造したオートバイがやってきた。

作品名:魔法使いの夜 作家名:せき あゆみ